美里敏則さん(松原出身)が受賞/やまなし文学賞
小説「探骨」、大賞は県内初
【那覇支社】第21回やまなし文学賞(同実行委主催)を宮古島市平良松原出身で那覇市在住の美里敏則さん(62)の小説「探骨」が受賞した。同賞の大賞受賞は美里さんが県内では初。今月13日に山梨県で受賞式が開催され28日、美里さんが受賞経緯などをコメントした。
同文学賞は山梨出身の作家樋口一葉を記念して創設され、「研究・評論部門」と「小説部門」の2部門で選考が行われる。今年は県内から美里さんのほか、大城利俊さん(63)が佳作を受賞した。また、同賞佳作には2007年に宮古島市在住のもりおみずき(本名・友利昭子)さんの受賞歴がある。
美里さんの大賞受賞作「探骨」は沖縄戦をモチーフにし、避難の途中で砲弾の破片を受けて死んだ母の前歯を手掛かりに主人公盛蔵が遺骨を探すという物語。
県南部土木事務所に勤務していた美里さんは、沖縄戦で犠牲になった人々の多くの遺骨がまだ県内各地に埋没していることに驚いたという。
美里さんは「戦争に関するテーマだが、こちらから読者に問い掛けるのではなく、今を生きる戦争体験者の姿をありのままに表現したいと思った」と作品の狙いを語った。
宮古島で精神を病んだ娘と孫娘の3人で暮らしている老父を題材にして描いた小説「ペダルを踏み込んで」で08年に第34回新沖縄文学賞を受賞している。
執筆活動は約15年だが、県職員を定年退職した後の趣味として本格的に小説に取り組むようになった。今回の受賞作を含め書き進めている2作品を戦争体験3部作として発表する予定だ。「受賞はとてもうれしい。宮古の同級生から多くの応援と祝福の声を頂き感謝している」と話した。
美里 敏則(みさと・としのり)1950年5月13日、宮古島市松原生まれ。宮高21期、琉球大学法政学科卒。県職員の頃から執筆活動を開始。2008年第34回新沖縄文学賞受賞、13年やまなし文学賞受賞。那覇市与儀在住。