伝統アギヤーが危機/佐良浜
潜水漁師1人減り、出漁休止
県内で唯一、佐良浜で受け継がれている伝統の大型追い込み漁、アギヤーが今年5月中旬以降、潜水に最低必要人数4人が1人減り、出漁できない休止状態になっている。出漁の見通しはなく、存続の危機が心配されている。これまで取引していた沖縄本島の大型スーパーへのグルクン(和名・タカサゴ)出荷はストップ。消費者市場への影響は大きいようだ。
伊良部漁協(漢那一浩組合長)は外国人技能実習生の確保で情報を収集したが、追い込み漁は対象外職種であることが分かり、お手上げ状態に。
宮古では、大正後期に佐良浜の漁師、漢那計徳(1900年・明治33年生まれ)が糸満からアギヤーを導入したとされ、90年余の歴史を誇る。人手不足の波は伝統漁業にも影響を与え、潜水漁師の後継者の確保は厳しさを増している。
県内で大型追い込み漁を展開するのは佐良浜の国吉組(国吉正雄代表)だけ。国吉組は、サバニ型の漁船国吉丸(1・7㌧、70馬力、国吉正雄船長)と、同じく福里丸(1・5㌧、70馬力、福里英二船長)の2隻で組織する名称という。2隻の乗組員は7人だったが、今年6月に1人は辞めた。数年前から本土出身4人が働いていたが、現在は1人だけとなった。
同漁協によると、過去6年のグルクン漁獲量実績は2011年の139㌧をピークに12年73㌧、13年93㌧、14年75㌧と100㌧を割り、15年は36㌧、16年17㌧と激減した。今年5月9日現在の水揚げ量は9㌧。グルンの資源減少が改めて表面化。しかし、その減少の原因は分かっていない。
宮古島の北方に広がる八重干瀬などのサンゴ礁海域で操業する大型追い込み漁の役割人数は、グルクンの魚群を袋網に追い込む潜水漁師が4人、2隻の船上で作業する漁師が3人。しかし、潜水漁師が1人不足のため、操業はできない。
国吉組は2015年から毎年5~10月までの半年間はカツオ一本釣り漁船1隻に網漁で漁獲した生き餌を有償で供給。生き餌が予想以上に漁獲された場合は、その生き餌採取は一時中断、本業の大型追い込み漁に着手する。今期は人手不足から本業は休止状態が続く。
日本での外国人技能実習生の対象職種の漁船漁業は▽カツオ一本釣り漁業▽はえ縄漁業▽イカ釣り漁業▽巻き網漁業▽曳き網漁業▽刺し網漁業▽定置網漁業▽カニ・エビかご漁業-となっており、潜水による大型追い込み漁は対象外。
漢那組合長は「アギヤーの人手不足を解消するために、いろんな方法で募集しているが申し込みはなく、難しい」と苦しい胸の内を明かす。
その上で「沖縄本島の大型スーパーからは現在、グルクンの注文はない」と話した。
10月以降、大型追い込み漁の本格的シーズンを迎える。国吉代表は「早く潜水できる後継者を1人でも確保し、グルクンを水揚げしたい」と見据える。
福里船長は「アギヤーは佐良浜の誇る伝統漁業。先輩たちから受け継いだ漁業なので、絶やしてはならない」と語調を強める。