宮古馬の保存法再検討へ/計画を大幅見直し
策定委員会で議論始まる
日本在来馬種の一つ「宮古馬」の現行保存計画が大幅に見直されそうだ。31日に発足した保存計画策定委員会で、繁殖能力がない馬を保存の対象から外すことなどを柱に据えた現行計画をゼロベースで見直す方向性を確認した。宮古馬の保存・活用のあり方を根本から問う議論が始まった。
宮古馬の保存をめぐっては、2015年度に保存計画が策定されているが、県の指導及び天然記念物としての位置付けを明確にすることなどを狙いに再検討の方針を確立。31日に学識経験者らを交えた保存計画策定委員会を発足させた。
委員会は県や市の担当者ほか、大学准教授、市史編さん委員らで構成。委員長には市教育委員会生涯学習部の下地明部長が就いた。
会合では、宮古馬の価値を共有しながらも保存・活用のあり方については決定打に欠く議論が続いた。
雄馬の保存方針として現行計画に定めた▽10歳以上で後継馬が出ている馬は保存から除外▽精液が薄く種付けが困難と判断できる馬は保存から除外-は見直した方が良いとする意見があり、異論はなかった。
県によると、保存から除外された宮古馬は天然記念物としての位置付けを失う可能性があるという。天然記念物の場合、移動などの手続きが煩雑になり、経済活動における自由度が制限されるためだ。だが、安易な天然記念物の除外は日本在来馬の価値を下げてしまうという懸念が出た。
また、宮古馬を飼養する管理者は、保存会から委託費を受け取ることができなくなるという点も大きな課題として浮上した。
この方向性について学識者らは「観光業者は宮古馬に注目している。天然記念物という前提で計画を練り直した方が良い」とする意見や、「外の人は宮古馬に対してあこがれを持っているのが現状だ。天然記念物から外すのは避けた方が良いのではないか」などとする慎重論を繰り広げた。
ただ、一方で「馬は増えても飼養する人が少ないという課題とどう向き合うかが大切だ。仕方なく飼育している人もいて続けていけるかどうか分からない。増やすのは良いが、その後どうするのか。ここを整理しないと前に進まない」と現実を直視した計画の策定を求める声があった。観光資源としての活用の難しさを指摘する声もあった。
策定委員会は今後、各地の保存・活用事例を調べながら複数の会合を重ね、保存計画を練り直す。
保存会によると、宮古馬の保存事業は1977年に宮古馬の雄1頭、雌1頭から始まっている。83~88年には粟国島から7頭を導入するなどして増やした。現在の頭数は48頭。
保存計画策定委員会委員は次の通り。
委員長=下地明(市生涯学習部長)▽委員=川上政彦(県家畜改良協会宮古出張所長)、荷川取明弘(宮古馬保存会)、島尻博之(同)、豊見山恵昌(同)、川嶋舟(東京農業大学准教授)、長濱幸男(市史編さん委員)、新城憲一(県文化財課)、友利勝彦(市畜産課長)