下地島を「宇宙港」に/一般向け旅行を提供
県と基本合意書を締結/PDエアロスペース
【那覇支社】県は10日、下地島空港と周辺用地に関する利活用事業提案の第2期事業で、同空港に「宇宙港」としての機能を付加し、一般向けに宇宙旅行を提供する「下地島宇宙港事業」を実施するPDエアロスペース(緒川修治代表、愛知県)と基本合意書を締結した。
同事業は、「宇宙に行ける島、下地島」をキーコンセプトに、下地島空港を同社が開発を進める有翼型宇宙往還機(スペースプレーン)の開発・実証拠点とし、2025年をめどに民間への宇宙旅行の提供を開始したいとしている。
緒川代表は下地島空港について、「3000メートルの滑走路は非常に大きなメリット。実証実験面でも、南北どちらからでも離着陸できるのも良い。開発・実証の拠点とし、沖縄の皆さんと協力して宇宙事業の発展を目指す」と説明した。
その上で、「資金調達状況にもよるが、早ければ来年8月にはハンガー(格納庫)を完成させ、10月、11月には機体を持ち込んで実証実験を開始したい。22年年頭には高度100キロ到達を成功させ、22年か23年にかけて(宇宙旅行の)事前募集を開始したい」などと述べた。
事業ターゲットはアジアなどの超富裕層で、料金は1400万円~1500万円の価格帯を想定。ジェットエンジンとロケットエンジンの機能を併せ持つ機体で、離陸から約40分で達する高度50キロ地点でエンジンを切り、同100キロ地点までを往復する約5分間の無重力状態を楽しんだ後、再び約40分かけて空港に戻るという。
同事業は、宇宙機開発拠点として利用する技術実証事業のほか、▽テナント事業として国内外の宇宙機キャリアを誘致し、ハンガー等の施設貸し出し・利用や機体運航支援等のサービス提供▽宇宙旅行者向け訓練事業、メディカル検査等の提供▽飛行実験を含む宇宙機の開発現場や宇宙旅行などをコンテンツにした観光スポットの提供│を行う。
計画では、21年に無人宇宙実験機の飛行試験、22年にハンガーや観光・訓練施設の建設と、開業準備を行い、23年にテナント事業、訓練事業、観光事業の受け入れを開始する予定。下地島空港からの宇宙旅行者数は、25年に年100人弱、30年に年1000人を目標としている。
県庁で行われた締結式で、謝花喜一郎副知事は「一般向けに宇宙旅行を提供するという、空のイノベーションとも言える大変夢のある提案。宮古圏域のみならず本県全域への波及効果が期待される。事業の早期展開を図るため、関連する道路など公共施設の整備などに取り組んでいきたい」と述べた。