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社会・全般
サトウキビ年内操業
栽培品目多様化を促進/農業所得増え担い手育成も
約35万㌧の生産量を記録した2009―10年産サトウキビ。3年連続の豊作に関係者は沸く。そんな中、年内操業を望む声が各地から聞こえる。製糖操業の現状を踏まえて、年内操業のメリットを検証する。
■操業の現状
宮古本島内の操業時期は、1980年代に変わった。株出しが盛んだった当時は1年1作の収穫で生産量が多く、工場は年内操業で対応してきた。
しかし、土壌害虫被害などによる不萌芽で生産量が激減。植え付け体系は一気に夏植えにシフトして2年1作の収穫となり、ここ数十年の生産量は~万㌧で推移した。工場は生産量に見合った年明け1月スタートの操業を行っている。
キビの品質は2月中旬に最も高くなる。品質取引が重視される昨今、現状の生産量で年内操業を実施すれば品質がピークを迎える前に操業が終了し工場側は売り上げ、生産者は所得の減少を招く。年内操業の機運が高まらない理由の一つだ。
■メリット
年内操業の実現は増産による農家所得の向上に加えて、土地の有効利用で栽培品目の多様化が図れるというメリットがある。
キビのみに頼らないという市全体の農政意識も高まる。砂糖に関する諸外国との貿易交渉などを懸念した上で下地敏彦市長は「これからは何があるか分からない」と指摘。「だからこそ土地を有効活用し、多品目を栽培しながら生産農家の所得向上につなげていくことが重要」と話す。
国の高率補助継続が危ぶまれる事態を想定した取り組みも必要不可欠と言えそうだ。
■実現性と課題
工場の営利と農家所得が絡む複雑な背景事情から、年内操業の実現に向けては増産以外にすべはない。工場関係者は「今の生産量では年内に操業を始めるのは難しい」などと明かす。その一方で「万㌧以上になってくると年内に始めなければならない」と工場の処理能力による年内操業の実現性を示唆した。
増産に向けて最も有効な手だてが収穫面積の拡大だ。宮古地区全体のキビほ場は約7000㌶だが夏植え一辺倒による2年1作の体系では、毎年半分の3500㌶分の収穫面積しか確保できない。必然的に収穫面積が増える1年1作の春植えと株出しの推進が増産の近道と言えよう。
■「是が非でも」年内操業、整う環境
根や芽を食害する土壌害虫を防除する関係機関の取り組みが効果を発揮している。誘殺灯設置事業や急速に普及したプリンスベイト剤の効果が大きい。県農業研究センターの新垣則雄研究主幹は「今後は株出しの面積が増えて、収穫後の宮古島の風景そのものが変わるはずだ」と強調。プリンスベイト剤で土壌中のハリガネムシが激減し、各地のほ場で株が立つ現象が相次いでいるからだ。
年内操業に向けて環境は整いつつある。実現すれば、今の操業時期では適切な植え付け時期を逸している春植え面積が増えるという相乗効果を生む。
年内操業は、生産農家の所得向上と貿易交渉によって生じかねない最悪な事態に対応できる体制づくりを促進するだけではない。土地の有効活用による栽培品目の多様化は、農業の魅力が増して高齢化に伴う担い手不足の解消にも直結、結果として若者の雇用を創出する機会にもなる。関係機関が「是が非でも年内操業」と訴える理由がここにある。