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社会・全般
池村 清吉さん(80歳)杜氏 城辺字砂川
酒造り60余年、いまだ現役
上比屋(ウイピャー)森の近く、タルガーの地下水をふんだんに使った泡盛造りに人生の大半を注ぎ込んできた。「多良川酒造」創業以来、杜氏、工場長として一途にこの道を極めてきた。「昔は、手わざと勘だけに頼ってきたが、今は、機械の導入で、すべてコンピューター管理のもと、量産も可能になった。しかし、酒は生き物、造るというより育てるもの。最高の条件をつくり出すことが必要」と話し、60年たった今でも、向きあう姿勢に少しのブレもない。
最初のころは、キビや糖蜜を使った汁酒を造っていた。そのうち、タイ米を使った泡盛に落ち着く。当時は電気もなく、火を起こすことから始めた。30度前後に保たなければ醗酵しない麹の温度管理で、冬の寒い日は夜中何度も起きたと、当時を懐かしむ。「昔のコージシャー(麹造り者)は24時間態勢だった。麹の隣で寝起きする生活だった」。若いころ、平良の酒造所で働いたのが、この道へのきっかけとなった。
今でも、工場長として若い従業員たちの指導にあたる。らせん階段で移動する地下2階、地上3階の工場で、仕事の工程を見て歩く池村さん。製麹機がうなる中で作業の説明をする。酵母菌を培養して増やし、麹を醗酵させる。麹菌が糖分を食べてアルコールに分解する。機械化になった今、センサーで自動的に知らせてくれるものの、製造過程は気の抜けない化学の世界。最近では蒸留粕をエタノール化し、燃料として使う施設も整備され、池村さんの職場でも稼働し始めた。
酒造りは、貯蔵能力と最適な自然条件が必要だといわれる。地下には大型貯蔵タンク(1万㍑入り)が150本も静かに眠っている。こうして育てられた酒は、古酒やもろみ酢、リキュールタイプのものまでさまざまな商品に仕立てられ、モンドセレクションでも金賞を受賞するなど世界でも認められた商品のかげに、杜氏の並々ならぬ思い入れがあった。 若い従業員たちが育ち、毎日出勤しなくてもよくなった。昨年からは余った時間をキビ作に費やす。「自然の中での仕事は気持ちがいい」と言いながらも、やはり、工場が気になる。朝夕、もろみをかくはんする作業に出掛けている。楽しみは、コップ一杯の晩酌。
池村 清吉(いけむら せいきち)1929年11月15日砂川に生まれる。1949年に「多良川」に入社。26歳で初代社長の妹・俊さんと結婚、3男2女をもうける。孫9人。