高校生死亡事故逆転無罪に困惑
遺族、悲痛な叫び/検察に再捜査を要望
「こんな判決、誰がどう考えてもおかしい」-。2008年11月、乗用車が2人乗りのバイクと衝突し、バイクの後部座席に乗っていた男子高校生(当時17 歳)が死亡した事故で、自動車運転過失致死の罪に問われた宮古島市の女性(43)の無罪判決が確定したことを受け、遺族は困惑と怒りに震える日々を過ごしている。
3日午後には宮古島警察署の交通課長らが遺族と面会。遺族によると同署は再捜査について「ゼロではない。可能性はある」と説明したという。
亡くなった男子高校生の母親(49)は本紙の取材に対し「絶対に再捜査してほしい。このままでは納得できない。もう一度、法の場で誰が運転して事故を起こしたのかをはっきりさせてほしい」と述べた。
遺族によると、同署の署員2人が母親の自宅に訪れ約1時間、これまでの経緯報告と再捜査を含めた今後についての説明を行った。 今回の遺族との面談について、同署では「これについてはコメントは差し控えたい」と話した。
一審では女性が酒に酔って軽自動車を運転しバイクと衝突事故を起こしたとして、自動車運転過失致死の罪などで懲役3年の実刑判決を受けた。
しかし、控訴審では弁護側が一審から主張していた「事故当時は同乗していた長女(当時15歳)が運転していた」との主張が争点となった。
判決では、この女性が運転していたとするには「合理的な疑いが残る」として、逆転無罪の判決が先月17日に言い渡された。福岡高等検察庁那覇支部は同31日、上告しないことを決め女性の無罪が確定した。
この判決について、母親は「それでは誰が車を運転していて、事故になり私の息子が亡くなったのか。車の中には必ず運転していた人間がいるはず。誰が運転していたかも分からないままで、無罪判決なんて誰がどう聞いてもおかしいと思う」と話した。
母親は「控訴審判決直後に検察は『上告するのでもう少し時間を下さい』と言ってくれたが、その後に『誰が運転していたか立証できなかった』と言って上告しないとの方針を伝えてきた。今回、宮古島署は再捜査の可能性はゼロではないと言っているので絶対に再捜査して犯人を見つけてほしい」と訴えた。
女性の「自動車運転過失致死罪」については無罪となったが、酒気帯び運転の道路交通法違反については事実が認められるとして罰金30万円が言い渡されている。
自宅の仏壇には男子高校生の遺影が置かれ、遺族は事故発生から2年間も悲しみの日々の中で生活してきた。
今回の判決を受け、遺族は悲しみだけでなく、受け入れられない現実とどう向き合えば良いのかわからないまま、苦しみの日々を送っている。