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社会・全般
TPP交渉参加の影響
糖価調整金500億円が喪失/求められる激変緩和策
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐり日本中が揺れている。「国を開く」と主張して交渉参加を目指す政府だが、その決断は国内農業の大変革を意味する。TPP交渉参加は、離島農業にどのような影響をもたらすのか。島最大の産業サトウキビに焦点を当てて探った。
■TPPのメリット
TPPとは太平洋を取り巻く国家間の自由貿易協定のこと。参加国は原則、関税の即時撤廃が求められ、例外品目の設定は極めて困難な国際協定だ。
TPPに参加することで国内製造業の輸出面では大きな利益が生じる。これは各国共通のメリットだが、問題は関税の撤廃で打撃を受ける可能性が高い国内農業にある。
広大な農地を有する米国やオーストラリアなどは、牛肉や砂糖を含めた大量の農産物を日本へ輸出。必然的に国内市場に安価な農産物があふれ、価格の面で国内産は太刀打ちできなくなる。
■輸入糖
外国産精製糖の価格は国産と比べて3分の1程度。現在は粗糖のみが輸入されて国内で精製されているが、関税の撤廃によって「外国産精製糖が輸入されるようになる」と農林水産省は想定する。
精製糖に関しては国産と外国産に品質の格差がない。従って農水省は、日本国内の精製糖のすべてが外国産に置き換わる可能性を指摘。こうなると国内におけるサトウキビなど甘味資源作物の需要は著しく低下し、生産の必要性すら問われてくるだろう。
さらに農水省は、輸入糖から徴収している約500億円の糖価調整金も「喪失する」と考える。この調整金の喪失もサトウキビ産業に壊滅的なダメージを与えかねない。
■農家手取り額と糖価調整金
外国産精製糖の輸入で国内甘味資源作物の必要性が問われようとも、一度に甘味資源産業が消滅することは考えにくい。ただ、農家所得に影響することは論を待たない。
農家に支払われるサトウキビ代金は、工場が買い取る価格の約5000円と、国の交付金1万6320円(いずれもキビ1㌧当たりの標準価格)で構成されている。
しかし、この交付金は輸入糖から徴収している糖価調整金を財源にしている。調整金と交付金は表裏一体の関係にあり、関税撤廃で農家への交付金も失われてしまう仕組みだ。
■募る不安、求められる農業改革の道筋
TPPに関し「日本の村という村の社会そのものが崩壊する」と危機感を示すのは県議の座喜味一幸氏。「農家の代表として絶対に認められない」と県議会内で訴えている。JAさとうきび対策室の平良富量室長は「国がどのように進めようとしているのかが見えないだけに、不安が先行してしまう。増産の気運が高まっていたのに水を差された」などと憤りを示した。
急速に進むグローバル化の波は農業分野にも押し寄せている。自由貿易によって製造業同様に農産物の市場が広がり、日本の安全な農畜産物を世界に売り出す機会ととらえる生産者もいるだろう。
ただ、大きな改革に伴う激変緩和策は必要だ。農水省のシナリオ通りに進むと仮定した場合、需要が落ち込む甘味資源作物を生産している農家をどう救うのか、糖価調整金に変わる財源をどのように捻出するのか。「国を開く」前に、生産現場の実態に応じた農業改革が求められている。
TPP 2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国で発効した。現在、米国やオーストラリアなど5カ国を加えて、サービスや通関、物流、金融、保険、通信など幅広い分野の自由化を目指し交渉中。