「音楽の力」信じたい/郷友
19日「No Refuge」新リリース
昨年10月、宮古島市市制施行5周年記念式典で「宮古島大使」に任命された歌手の下地勇さん。今では「ミャークフツ」(宮古語・宮古方言)で歌うアーティストとして、県内外ですっかり有名になり、県内はもとより、世界へと活動の場を広くげている。
1月19日にレコードリリースが決定した8枚目のニューアルバム「No Refuge」は、「言葉(ミュヤークフツ)を駆使する表現スタイルの一線を越えた作品」「やりきった」作品だと話す。
「ミュヤークフツにこだわることこそが自分の表現方法だと確信していました。言葉をまったく知らない沖縄本島や本土のファンも言葉そのものの魅力に引き寄せられたのだと。ところが、一方で『言葉が分からない』『意味を知りたい』というリスナーの強い要望があり、それにも応えなければという思いに駆られたのです」。
下地さんは、これらのことをきっかけにして標準語での創作にトライしていく。しかし、結局「原点回帰」することの重要性を知る結果となった。「プロ歌手として本格稼働し自らを見つめた時、『言葉』を完全にものにしていないのではないかという思いの方が強くなりました」。いわゆる「気づき」の瞬間だ。その思いは、海外でのコンサート活動を通じて自然体で下地さんの中へと入っていった。
「キューバなどでのコンサート活動中、ふと『レゲエ音楽』のことを考えました。あんな小さな島国の音楽が、今や全世界に通じるものになっている。宮古もまったく同じではないか。『音楽の力』とはそういうものだ。それを信じよう」と。
八重山で活動を展開する新幸人さんとの共演は「先島ミーティング」という形で新境地を開いた。自分のスタイルにこだわることで、見えてくるものがあった。新アルバム「No Refuge」は、人間の欲求をミュヤークフツで表現した哲学的な作品だという。
「情報化社会、監視社会をボキャブラリーの少ないミュヤークフツで、やゆしたもの。『狩り』や『収穫』に例え、叙事詩的な物語にし、ミュヤークフツでの表現限界の山を越えたという充実感があります」と話した。
今年、下地さんは海外での活動を多く予定しているという。宮古島大使としての役割と、ふるさとへの感謝の念を忘れない郷友アーティストが世界に羽ばたく年になりそうだ。
▽プロフィル 下地勇(しもじ・いさむ)1969年10月8日、宮古島市平良久松生まれ。父武さん、母ツルさんの次男。久松小、久松中を経て、88年宮高卒。沖縄国際大学卒。99年「サバヌニャーン」が口コミで話題となる。00年8月シングルCD「我達が生まり島」リリース、04年プロ歌手として本格活動。10年10月宮古島大使に任命。