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社会・全般
高齢者の万引きの増加の問題点は何か、その防止策は
沖縄国際大学名誉教授 福里 盛雄
1 高齢者の万引きが増加している
高齢者の万引きが増加し、そして再犯が繰り返されることが社会的問題となっていると、マスコミは報じています。どうして、人生を真面目に生きてきて、人生の夕暮れにさしかかったこの年になって、万引きという自分の心を痛めるような寂しい行為をするのだろうか。
その原因は、経済的に生活の苦しさもあると考えられる。しかし、経済的に生活が苦しさだけではないようです。スーパーでたった数十円のガムを万引きした高齢者の例も。しかも、高齢者の万引きは再犯が多いようです。ということになると、高齢者の万引きの背後には、もっと深い高齢者特有の満たされない心の空洞があるのではないだろうか。
確かに高齢者は孤独であります。配偶者には離婚されたり、配偶者の一方が病気でその看護で疲れ果ててしまい、ついには死別されたりと孤独のどん底に突き落とされている。同居する家族もなく、周囲には語り合える友もいない。昔のような隣近所の人間的絆も今は望めない。
今日の社会では、プライバシーの尊重という壁が、人と人との間を隔離し、その結果、人はそれぞれ孤独の穴の中で生きるようになった。本来、人間という動物は社会的交渉なくては、心の満足ができない存在であることを無視してしまった。人間は社会的交渉の中で自分の特徴を発揮し自己の存在価値に気付き、生きる力も湧いてくるのです。高齢者の生きる力が、その人の行為をコントロールする機能を働かすのである。
2 高齢者の万引きを防止する策は考えられないだろうか
高齢者の万引き行為を止めさせるためには、自分の行為をコントロールする力をその高齢者自信心の中に、育成することだと考えます。そんなことをするのは人として恥ずべき行為ではない。例え、人に見つからなかったとしても、自分の心が痛むし、スーパーを経営している人の立場に立って考えれば、どれほど欠損を与えることだろうか。それ以上に事業を続けていく意欲を失わしかねないのだ、と考える時間的スペースを持つようにならなければなりません。
考える時間的スペースを持つことは、どんな行為をすべきか選択の自由が残されているということであります。どんな行為をなすべきか、すなわち万引きをしようか、それとも止めようか、いずれの行為をしようか、選択の余地がまだ残されています。いずれの行為をするかの選択の基準となるのは、その高齢者の自分に対する価値観だと思います。
正しい価値観に生きてきた高齢者は、正しい行為をすることを選択し、万引きをしませんし、低い自己評価に生きてきた高齢者は、心の誘惑に弱く店の品物に手を出してしまいます。
それでは、高齢者の正しい自己評価は、どのように身に付けさせることができるでしょうか。その人の現役時代は職場での能力によって、その人の自己評価は形成されます。しかし、定年退職と同時にその評価も消えてしまい、全く存在価値のない産業廃棄物同様に取り扱われ、収入を稼いで権威を維持していた姿も、今は消えて遠い思い出となり、家庭内では存在価値が認められず、居場所もなくなっている高齢者が増えてきた。
居場所のない、存在価値を否定された高齢者は、孤独であり寂しい存在です。しかし、孤独感、心の寂しさの空洞が満たされなければ、高齢者は幸福にはなれないのです。
幸福な人は、他人の幸せになるようなことをするのであって、他人に迷惑になるようなことはしません。高齢者の孤独感は、積極的活動によって充足されます。それによって自己の存在価値を発見し、生きる力が湧いてくる。そして、万引きもおのずと止めてしまいます。