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社会・全般
吾輩は犬である/下地 昭五郎
ペン遊ペン楽2011.3.24
まずは自己紹介とまいりましょう。吾輩は中国生まれで、ペキニーズというれっきとした血統種名があり、愛玩犬十傑にリストアップされています。生まれ故郷である中国では、古来より歴代皇帝のペットとして宮廷内に育てられ、豪華な環境で犬生を謳歌しました。でもどういう因縁かは知らないが、吾輩は、日本の、しかも、南海の小島、この宮古島の、まるで宮廷とは比べ物にならない劣悪な環境に身を置くことになってしまいましたが。
性格ですか。そうですね~。とにかく「人懐っこさ」だけは犬後には落ちませんね。それはもう人も羨む、というか他犬も羨むほどですね。食欲は旺盛。それがたまに過ぎてへんなものまで口にして臓器に異常をきたし、今のご主人のおかげで病院へ運ばれたこともあるのですがね。われながら慎まなければと思うのですが、こればかりはセルフコントロール機能が鈍くてご主人に迷惑をかけたりと反省のしきりです。しかし、この件に関しては自己責任ばかりではないですよ。規定食以外のものを、頼みもしないのに、提供してくれる人災もあるのですから。本音を言うと、それは吾輩の術策に嵌った悪女の深情けというものでしょうけどね。
ところで、吾輩が貧しい環境に住むようになってから一年経ったでしょうか。最初の頃は、新しい環境に慣れずビクビクしていましたが、この頃は、すっかり慣れっこになって、ご主人をはじめこの家の者たちは吾輩の魅力の虜になっているようです。ことにご主人とは主従関係がまるで逆転したような錯覚さえ覚えるほどです。そうはいっても、吾輩が調子に乗って悪戯が過ぎたり、ルール(例えば、指定の場所での用足し)を破ったりするときのご主人の怒りはまるで正気の沙汰ではありません。そういうときのご主人の如才なさは始末に悪い。なんでそんなことぐらいでこんなにも凶暴に走るのだろうとご主人の肝力のなさを嘆くのですが、これからの長いつきあいを算段すると、そうばかりも言っておれず、上手に生きる処世術を身につけることにしました。例えば、うんと媚をふることもその一つです。「吾輩が喜ぶだろう」と忖度して、ご主人は吾輩のお腹をスキンシップしたり、あろうことか一物をマッサージする奇癖(セクハラとやらの人犬問題でもあると思うのだが)があることを利用して、ご主人が吾輩の前を通るときは、すばやく仰向けになって無防備の体で媚を振るのです。お互い気持ちよさは相乗効果抜群。と言いたいが、内心は大いに不満。今後のこともあるので観念しているだけのことです。
まあなんやかんやと不満めいたことをくだくだ述べてきましたが、今のところ、ご主人をはじめこの家の者たちを愛しています。やはり〝絆〟は大切ですから。申し遅れましたが、吾輩の名前は〝太郎〟と申し上げます。よろしくお願いします。
(宮古ペンクラブ会員)