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社会・全般
2011年4月20日(水)23:11

塩の道(行雲流水)

 「子どもたちに生きる力、働く意義を伝えたい」-大城浩県教育長の就任の弁だ。若者の離職率の高さが気になると言う。就業者の7割が辞めていく「七五三現象」(中卒7年、高卒5年、大卒3年以内で離職)。勤労意欲・職業観の希薄さが指摘されて久しい


▼就職難が叫ばれる一方で、求人難でもあるというミスマッチ現象。「働くこと」についての心構えの原点は、子どもの頃の体験や見聞にあるようだ。「生きる力」とは、家庭や学級や社会との一体感から生まれる環境適応能力のことであろう

▼民俗学者宮本常一氏の著作「塩の道」は、古来の衣・食・住を山村僻地に残る習俗や言語から探り、その発達のあとを明らかにした。稲ワラから20種類もの生活用具を家族全体で作っていたことなど、「物を創造する下地は、子どものとき一人ひとりが体にしみ込ませたものだった」と指摘。自分の生活を打ち立てていく上の大事な工夫がたえずなされていた、と述べている

▼明治の文明開化で西洋諸国にすぐ追いつくことができたのは、日ごろの生活の中で育まれた下地がすでにあったからかもしれない。今回の大津波で家を失った被災地のお年寄や子どもたちが示した、あの健気さにも相通じるものがありそうだ

▼冒頭の言葉は、「先生の生きる力、働く意義」をも問いかけているように思える。もちろん、子どもにとって最も身近な先生は父母の背中だ

▼4月は進級・進学・人事異動の季節。職場でも学校でも家庭でも新風が吹く。「旧態依然」の殻から脱皮する契機としたい。


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