災害時の「地域力」重要
市の保健師、仲宗根さんが帰島報告
「災害時は、自治体住民の強い結び付きがその後の支援態勢を大きく左右する」―。東日本大震災への保健活動支援のため、現地で被災者の健康調査に当たった宮古島市の保健師、仲宗根美佐子さん(47)は下地敏彦市長に帰島後、報告した。地域の結び付きが希薄になっている社会においては、災害弱者と言われるお年寄りや障害者、子ども、妊婦などへの支援は最重要課題だ。「防災意識を持ち、関係機関との連携や自治会組織の育成に力を入れることが大切だということを学んだ」と話す仲宗根さん。被災地での体験を基に、今後は機会あるごとに災害時における「地域力」の大切さを訴えていく決意だ。
市は東日本大震災の被災者支援で保健師6人を岩手県に派遣することを決めた。仲宗根さんは先陣を切って5月9日~13日までの5日間、岩手県大船渡市で活動を展開。4人のチームで避難所や仮設住宅に住む被災者たちの健康状態を聞き取り調査した。
情報を収集し、医療班や心のケア班に的確な指示を与えながら避難者の健康を支援するのが主な任務だ。
その中で感じたことは、避難所ごとで心のストレスに差があったことだ。
物資が不足がちで不自由な思いをしているはずの小さな避難所で、お年寄りたちが明るく振る舞っている。そればかりか避難所を飛び出して、近くの山に山菜採りに行ったりして自立度が高かった。
「その避難所は、自治体の役割がしっかりと機能していた。役員らが交代でお年寄りたちをサポートしていた。周囲は顔見知りの人たちばかりで、互いに支え合うという仕組みが自然にできていた」
反面、寝床を段ボールで仕切ったり、シェルターで覆ったりして、互いに距離を置いて生活している避難所もあった。
「そこは大きな避難所で物資も行き届き、トイレもきれいだったが、心のケアが必要とされることを強く感じた」という。
東日本大震災で、宮古でも災害に対する認識が高まっているが、避難所の周知や整備、食料の備蓄などが課題となっている。いつ起こるか分からない災害への対応は行政だけでは不十分だ。
仲宗根さんは「避難した後の被災者の精神的な支援態勢も重要となってくる。防災という意識を持ちながらの自治体づくりを広めることができれば」と話す。