岩の上に「サンピラー」出現/狩俣地区
森万里子氏の作品設置/七光湾プロジェクト第1弾
世界的に活躍する日本人アーティストの森万里子氏のアート作品2点を、宮古島の狩俣地区にある七光湾へ設置する「森万里子 七光湾プロジェクト」の第一弾として29日、一つ目の作品が設置された。作業に立ち会った森氏は「イメージよりも実際に設置した方が美しい。この日まで支えてくれた人たちに感謝したい」と語った。
同プロジェクトは、七光湾の自然環境を
背景に森氏のパブリックアートを設置することで、狩俣を芸術文化の拠点とするアート活動を展開するとともに地域環境の保全と活性化を目指すもの。設置する作品は「サンピラー」と呼ばれる日時計の針のように夕日を浴びて影を作る柱と、ライトを内蔵し光を放つ「ムーンストーン」の2点。今回は「サンピラー」を湾内にある岩の上へ設置する作業が行われた。
自然環境への影響を配慮し、設置作業には機械は使わず、すべて人の手によって行われた。午前6時、現場に集合した作業員らはまず、アクリル製で高さ5・2㍍、重さは約5㌧もある「サンピラー」をいかだに乗せて岩までえい航。その後、岩に設置した滑り台状の板へ移し替え、チェーンと滑車を使って少しずつ岩の上まで引き上げていった。午後2時ごろ、引き上げ作業が終了すると、森氏の指示で設置する向きの調整などが行われた。設計では風速100㍍、波高7・5㍍まで耐えられる仕様となっている。
森氏は「この日を迎えることができうれしい。支えてくれたたくさんの人に感謝している。自然の中にある作品を見て、宮古を訪れた人たちが、宮古の文化に触れ、学ぶ機会になってほしい」との思いを述べた。
当初予定では、「サンピラー」設置は4月下旬を予定していたが、東日本大震災の発生を受け延期されてきた。森氏は「人間は自然に比べると小さな存在。自然に敬意を持って共存してきた昔の人たちの暮らしぶりをもう一度、よみがえらせる必要があると思う。この作品がそのきっかけになるとうれしい」と語った。
二つ目の作品「ムーンストーン」は2012年以降の設置を予定。完成すると、冬至の日の日没時に「サンピラー」の影が湾内に浮かべられた「ムーンストーン」にまで届く設計となっている
同プロジェクトの総予算は約3億円で、09年から予算調達のため国内外の各種団体などから寄付を募集。10年2月には資金調達のためアメリカで税制上優遇措置認定団体を、同年11月には宮古島市に「NPOガイア・アート協会」を設置した。宮古島市も同協会へ、「ふるさとまちづくり応援基金」から522万円の補助金を拠出している。