人頭税時代の地機復元/宮古島を「苧麻の里」へ
「文化遺産生かす事業」着々
宮古の織物文化研究協議会(下地和宏会長)が、文化庁の補助を受けて取り組む「文化遺産を生かした観光振興・地域活性化事業」が着々と進んでいる。今月上旬までには、人頭税制のころ宮古上布の製作に使われた地機を復元。琉球王府の注文に応じて上納した「御絵図柄」の宮古上布の再現作業や、宮古に自生する苧麻の試験栽培も始まった。
同事業は、宮古島全体を「苧麻(ちょま)の里」のキャッチフレーズで売り込む将来構想を描く。地機は、同構想実現に向けた一つのステップとして復元した。
地機は縦の長さが145㌢、幅が約80㌢。先端に取り付けた「マキダ」と呼ばれる大きな丸太と、座る織り手の腰を経糸(たていと)で結んで織る仕組みだ。
試し織りをした宮古織物研究会の仲間伸恵さんは「地機は織り手の腰の動きで、経糸の張りの強弱を調節できるため、緯糸(よこいと)の食い込みがいい。風合いの良い物ができそうだ」と期待する。
現在、宮古上布の織りに使われている機は、1908年以降に導入された高機がほとんど。地機は、それ以前に使用された。仲間さんは「地機織りの技術で、宮古の織物に新しい可能性を加えることができるかも知れない」と話す。
苧麻の里構想は、具体的には①地元の人や観光客が地機などの伝統織機を使って苧麻のオリジナル作品を製作する体験プログラムづくり②苧麻糸を使用した服の普及─を目指す。
体験織りは、製作が容易なストールや短時間で作れるランチョンマットやコースターなどが候補。服の普及には、安い物から高い物まで豊富な品ぞろえが必要と指摘する。
宮古苧麻績み保存会(神里佐千子会長)は、これまでの調査で12種類の自生種を確認した。栽培試験ではこれらの品種の特性を検証する。
御絵図柄の再現は、宮古上布保持団体(新里玲子代表)の会員6人が、取り組んでいる。
同事業の期間は10~12年度までの3年間。最終の12年度は、展示会やシンポジウムを開く。