城辺スマフツ辞典(下巻)を発刊/研究会・市教委
「ナ行」から「ン」まで7000語収録
市教育委員会が管轄する城辺公民館の事業の一環として城辺スマフツ研究会(宮里久男会長)が編集を進めてきた城辺スマフツ(方言)辞典の下巻が、このほど発刊された。下巻は五十音表の「ナ行」から「ン」までで、7000語を収録した。辞典には、方言の標準語訳だけでなく、面白い用例やンキャーンジュク(昔の人の格言)なども収め、読んで楽しめる内容にした。
宮古方言は、宮古にしかない大事な言語文化。しかし近年は、若い世代が話せなくなり存続が危ぶまれるようになった。そんな中、宮古方言の継承を目的に1995年、スマフツ講座(城辺町立中央公民館主催事業)が開講。2年後の97年には、方言辞典を作る目的で、「城辺町スマフツ研究会」(当時)が発足した。
上巻(8000語収録)は2003年2月に発刊された。下巻発刊に向けたスマフツ研究会の活動は2004年から始まり、発刊までに7年を掛けた。
内容は与那覇ユヌスさん(故人)の原稿を参考に、小中学生向けに編集したという。印刷した600冊は、城辺の全小中学生へ配布し、宮古の各学校や団体に1冊ずつ贈呈した。
宮古方言は、「ん」で始まる言葉が特徴とされる。「ンミャーチ(いらっしゃい)」が代表例。「ンクミ」には「①下っ腹に力を込めてうなること②便秘に罹った人がうなり声をあげて大便の排出に苦しむさま③妊婦が出産する際、力いっぱいうなり声をあげて力むこと」-などと注釈を付けた。「ンクミ」にはリアルな響きがあり、宮古方言を分かる人には、実感がぴんとくる。
格言の一つ「ニンギンヌ キ モー マツギーヌパーンドゥ ツツマイ(人の心は松の葉で包まれる)」には、先人の瑞々しい感性が息づく。物が針状の2本の松の葉に包まれる道理はないが、善意が人の感動を呼ぶことを例えた。
「「ナ行」の「ナグ」については人頭税制時代に、氏族に隷属した哀れな農民をいうと説明した。辞典は「1893(明治26)年、中村十作(新潟出身)と城間正安(那覇出身)をリーダーとした農民運動で(ナグは)廃止されたが、世にも不思議な『名子(ナグ)制度』の廃止は、奴隷解放にも匹敵する運動の成果だった」と歴史にも触れた。
宮里会長は「スマフツ辞典を活用なさる方々が、地域の発展、文化の振興に貢献されることを願い、さらに言語学、民俗学などの研究にいくらかでも役に立てば幸い」とあいさつを述べている。
城辺スマフツ研究会員は次の通り。(敬称略)
会長=宮里久男(砂川)▽副会長=砂川松吉(上区)▽監事=池田健盛(西中)中野隆作(西東)▽事務局長=下地智(新城)▽会員=下里栄作(友利)本村キク(比嘉)友利貞一(吉野)