パイヌヤー改修が完了/狩俣の祭祀場、記念講話開く
狩俣集落の祭祀が行われる「ウプグフムトゥ」(大城元)の「パイヌヤー」(南棟)改修工事が今月中旬に完了し、改修事業の記念講演会が28日夕、同所で開かれた。元北小学校校長で歴史民俗研究家の佐渡山正吉さんが、ウプグフムトゥや「ナツブー」(夏まつり)の由来について講話した。
講演会には同地区の住民のほか、本土の大学で宮古の歴史や民俗学、歴史建造物について学ぶ学生や研究者らが集まった。同集落では31日まで約15年ぶりに祭祀ナツブーが行われている。
村落の始祖神を祀るウプグフムトゥは祭事、神事の中心で、同所には対をなして男女別の2棟の家屋があり、「ニスヌヤー」(北棟)には神女が集い、パイヌヤーには男性が集って祭祀儀礼を行う。今回、改修されたパイヌヤーは約58年前に建てられ、老朽化したため、補修工事が行われた。
記念講演会は同パイヌヤーの中で行われ、佐渡山さんが「ムトゥ」の歴史とナツブーの由来について説明した。古来の主食であり、祖(年貢)の対象であった「粟」の収穫に感謝し、向こう1年の五穀豊穣を願うナツブーは、同集落の農耕儀礼の一つ。
佐渡山さんは「ナツブーは御主供物(祖)であった粟を納めた喜びを『座』(村の集会)で祝ったことに由来している」と述べ、「人は集まった場所で、知恵が出るという宮古のことわざが示すように、祖先を大事にする心が親子関係、人間関係を育み、狩俣の重要な祭祀の位置付けを持つようになった」と説明した。
集まった人たちは、農耕文化と祭祀にまつわる佐渡山さんの講話に熱心に耳を傾けていた。