陸と海の境目を確認/城辺砂川
津波よけ祭祀「ナーパイ」/女性たちが神々に祈願
城辺砂川地区の上比屋山(ウイピャーヤマ)で9日、津波よけ祭祀「ナーパイ(縄張り)」が行われた。地元の女性たちが、ダティフ(ダンチクと呼ばれている竹に似た植物)の棒を海と陸の境界に立てて回り、津波の浸入を防いでくれるよう神々に祈った。
毎年、旧3月最初の酉(とり)の日に行われる。
御嶽で最初の願いが終わると、約20人の女性たちが列を作り、坂道を下りながら目的地の海岸に向かった。
途中、一人一人が抱えた数本のダティフを道路のそばに1本ずつ差し立てて、波がこの境界まで上がってこないように願った。
女性たちは、海が見える場所で腰を下ろし、ウィピャームトゥに祭られている神々の名前を唱える神歌を歌いながら熱心に祈った。
さらに歩を進めた後、輪になってクイチャーを踊り、五穀豊穣を祈願した。
男性たちは、女性たちが祭祀を執り行っている間、神歌を唱えながら船漕ぎをまねる儀式を行った。
砂川自治会の砂川安功会長によると、高齢化などで、参加者が少なくなっている。また、神歌を歌える人も少なくなり、継承が難しくなっているという。
ナーパイを初めて見たという宮古島地方気象台長の宮田洋さんは「津波の災害を忘れずに、祭祀を続けているのはとても良いことだと思う」と話した。
過去の災害を後世にどう残していくのかを研究している東京大学特任助教の定池祐季さんは、地元の女性たちと一緒にダティフを立てて回った。「歩きながら祈ると高低差を意識する。防災の観点からも大事な祭祀だということが分かる」と語った。
祭祀に詳しい佐渡山安公さんによると、昔は祭祀の女性の列に出会うと、3年間にわたり供え物をして神に謝罪しなければならなかった。上野新里では、祭祀の列が来るとホラ貝を鳴らして注意を促していたという。