二人三脚で玉掛け/見里さん親子
娘の麻衣さん(27)がデビュー
サトウキビをトラックに積み込む作業で重要な役割を担う玉掛けに挑む一人の女性がいる。平良福山地区に住む見里麻衣さんがその人。年齢はまだ27歳と若い。父博之さん(63)の一声で始めた玉掛けだが、今ではやりがいを感じている。
昨年7月に帰郷。それまでは歯科衛生士として都内で働いていた。ハローワークに通って仕事を探していたら、博之さんが「玉掛けの資格を取ればいい」と一言。二つ返事で了承し、取得した。
今年1月、沖縄製糖が操業を開始。博之さんはクレーンの運転手だ。親子二人三脚での積み込み作業が始まった。
玉掛け作業はバランスが命だ。中心を外せばキビの山は崩れる。不慣れなうちは博之さんがサポートしたが、麻衣さんは日を追うごとに見違えるように腕を上げた。博之さんが「どこに出しても恥ずかしくない」と誇るほどの成長ぶりだ。
「農家の気持ちに寄り添いたい」。いつも麻衣さんは心掛けている。近所のおばあちゃんから教えられた。「常に自分のキビだと思って丁寧に扱いなさい」という教えに感銘を受け、「1本も残さない」と心に決めた。
父の偉大さにも触れている。「農家への気遣いや心配りがすごい。農家の気持ちに寄り添うことの大切さは、父の背中を見ていれば感じる。父には尊敬しかない」。
玉掛けの仕事を始めて2カ月。「故郷の人と密着できる仕事でやりがいがある」と話す。困ったことはワイヤから飛び出す金属片。これがとても痛い。「何とかならないんでしょうかね」。唯一の要望のようだ。
収穫期が終われば次の仕事を探す。新しい仕事に就くと、そう簡単に玉掛け作業に当たることはできなくなる。「やりたいんですが…」と話す麻衣さん。玉掛けへの愛着は強くなるばかりだ。
博之さんも思うところはある。「娘との仕事は楽しい。クレーンの資格だって取ってほしい」という欲もあるが、「何にでも挑戦することが大切なこと。玉掛けをきっかけにして挑戦を続けてほしい」ときっぱり。父親として、娘が選ぶ道を全力で応援するつもりだ。