生乳の島内生産困難に/唯一の酪農牧場廃業へ
加工業者に文書で通知
宮古で唯一、酪農牧場を運営する農事組合法人が酪農事業を廃業するとの文書を23日までに島で唯一の牛乳加工業者に通知していたことが分かった。通知文書では「今月31日をもって、生乳の出荷を終了する運びとなった」としている。廃業となれば島内での牛乳生産は終了することになり、学校給食にも牛乳の供給はできなくなることから、関係各方面も困惑している。この問題をめぐっては昨年7月にこの酪農牧場の土地と建物が競売にかかり、落札されたことが起点となる。
設備と乳牛だけでは事業経営が困難な状況となったが、関係各方面の調整で昨年末までは牛乳を生産し、学校給食にも供給してきた。
その間にも同農事組合法人と加工業者は、島内での牛乳の安定供給に向けて同法人の営業権を加工業者に譲渡する方向で協議を続けてきた。
しかし、設備や乳牛の譲渡額で両者の大きな隔たりが解消できず話し合いは決裂し、事業廃業を通知する文書が23日に同加工業者に届けられた。
同法人側は「これまで協議を続けてきて妥結できると思っていたができなかった。土地を落札した企業が私たちに賃借することはできないと明言しており、私たちも貸借してまで経営を続ける意思はない。さらに加工業者とも譲渡額で妥結できなかったので酪農事業の整理を決意した」としている。
一方で加工業者側は「銀行とも融資の相談をしながら新しい法人を立ち上げて牛乳生産をする予定だったが、融資額と譲渡額とで大きな隔たりが解消できていない状況でこの文書が届いた。私たちとしては何とか島内生産を継続して学校に牛乳を届けたいとの思いを今も強く持っている」と話した。
また、法人側も「私たちも牛乳生産が宮古から無くなることは問題だという認識を持っている。学校から牛乳を無くさないためにも各方面がこの状況を何とか解消できるよう動いてほしいし、協力してほしい」と述べた。
市教育委員会の宮國博教育長は本紙の取材に「私たちとしては何とか島内での牛乳生産を継続してほしいという思いが強い。生産者と加工業者間でなかなか調整が付かないということなので、何か話し合いの場を設けてくれれば積極的に参加したい。その際には県学校給食会にも参加を働き掛けたい」と述べた。