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行雲流水
2017年6月29日(木)9:01

【行雲流水】(トランプ現象)

 トランプ大統領就任から半年。その言行は、今なお読み解きにくい。TPPやパリ協定からの離脱は、国際協調路線の放棄か。難民・移民の受け入れ制限は、建国の精神への冒涜(ぼうとく)ではないのか

▼米国は従来、欧米式近代化モデル(自由、人権、民主主義、法の支配など)を全世界に広めようとしてきた。トランプ大統領は、このリベラル派の理想主義が米国の体力を損ねていると考えているようだ

▼米国東北部の工場労働者は「時給17ドルでは家族を養えない」と訴える。そんな不満の波に乗って、トランプ大統領は誕生した。国内経済の専守防衛を唱える米国第一主義は、「もはや世界へ貢献する余裕はない」と言っているようにも読める

▼米国、ロシア、中国などの大国間では、核抑止力が効いているので戦争は起こらない。地域紛争に関わることは米国の財政負担が増すだけだから、ほうっておけ。そう考えているのかも

▼政治エリートたちの「既成概念」に反旗をひるがえす、一種の革命児なのかもしれない。江戸時代末期の勝小吉(勝海舟の父)の生きざまに似ている。庶民感情に寄り添った反骨の気概の表出だ

▼勝小吉は42歳のとき、半生記「夢酔独言」(復刻版-平凡社東洋文庫)を書いている。その手記の最後に「男たるものはおれが真似をばしないがいい。孫やひこが出来たらば、よくよくこの書物を見せて、身のいましめにするがいい」とある。トランプ政権の「今」は、勝海舟のような先見の明のある人物が育つ「揺籃期」にある、と見るべきかどうか。

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