行雲流水
2017年9月5日(火)9:01
【行雲流水】「お盆」
ストゥガツ(旧盆)。3日(旧13日)は祖先を迎え、ごちそうを供え、旧15日のきょうは、夜遅く祖先の霊を送る▼
この行事は、祖先の霊を祭る宗教行事ではあるが、沖縄各地のエイサーや八重山のアンガマ、宮国の綱引きなどの行事や「盆と正月が一緒に来る」などの言葉があって、「まつり」の要素が大きい。まつりだから皆が一緒に楽しむ。島外で住んでいる家族や親せきも帰省、絆を実感し、深める機会にもなる
▼死後の世界に対するイメージや信仰心は人それぞれである。孔子は弟子の季路に答えて言った。「いまだ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」。永六輔は書いている。「死者を覚えている人がいる限り、その人の心の中で生き続ける。最後の死は、死者を覚えている人が誰もいなくなった時である。でも人は歳月の中で亡くなった人のことを忘れがちである。だから、時々誰かと故人の思い出話をしよう」
▼世人の最大公約数的な感覚ではなかろうか。その意味で、お盆は生者と死者の交流の場と言えなくもない
▼霊を送る時は、道端で、ごちそうを供え、線香をあげて、送る。以前の「悪童」たちは、道の片隅で、うんちをして、木の葉で覆い、その上に線香をたいた。すると子どもたちが走ってきて、手さぐりで獲物を探した。いい香りのする思い出である
▼お盆は、農耕民族の和の文化を基底に持ち、排他的でなく、寛容に、厳しい戒律や教義を持つ宗教とさえ大方共存している。多様な価値観を理解し、尊重し合うことが、特に、今の世界では必要である。