綱引き合戦 旧盆熱気/上野宮国で伝統行事
各家庭では紙銭焼き
旧盆(ストゥガツ)送り日の5日、各家庭では親族が集まり、後世のお金「紙銭(かびじん)」を焼いて先祖を送り出す行事が行われた。上野宮国では伝統の大綱引きがあった。老若男女が東西に分かれて綱を引き合い、威勢の良い掛け声を旧盆の月夜に響かせた。
旧盆3日目の送り日(ウフイユー)は、祖霊にごちそうを供えて感謝の気持ちを表し、紙銭を焼いて後世に送り出す行事。家族全員で健康と子孫繁栄も祈る。
上野宮国では、送り日の夜に綱を引き合う。このため、綱引きが始まる前の夕暮れ時に紙銭焼きを行う家庭が大半のようだ。
上原隆治さん(62)の自宅では午後7時ごろから紙銭を焼いた。ボウルにアルミホイルを敷き、一枚一枚を丁寧に焼き続けた。
「今年も家族みんなで良い旧盆になった」とほほ笑む上原さん。子と孫と一緒に祖先に感謝した。「こうして健康で迎えられることが何よりだよ」と話した。
同じころ、集落の中心では子どもたちがクイチャーを踊って大綱引きをアピールした。公民館のスピーカーからは参加を呼び掛けるアナウンスが響いた。
午後8時ごろから綱引きが始まった。集落内外の住民が東と西に分かれて力の限り綱を引き合った。それぞれ大粒の汗を流しながら声を張り上げ、年に一度の祭りに夢中だった。
3本勝負の結果、初戦は西軍が勝利したが、第2戦と第3戦は東軍に軍配が上がり、向こう1年の豊作が約束された。
宮国の綱引きに係る作業は中学2年生が取り仕切るという習わしだ。綱の材料のキャーン集めも、綱を編む作業も、本来は中学2年生をリーダーにそれ以下の子どもたちが担当する。
今は子どもの数が減って青年会の力添えを必要としているが、それでも中2の生徒は伝統行事を引き継ぐリーダーとしての誇りを胸にこの日を迎えている。
今年の西軍リーダーは女子生徒一人。その大役を担った砂川生芽(いぶき)さんは「作業中の人への差し入れとかを担当した。今年はリーダーが一人で寂しいけど伝統を守りたい。来年は4人いるので、しっかり引き継ぎたい」と担い手としての決意を語った。
その生芽さんの父、寿徳さん(46)はリーダーの親として綱引きの作業に全力を傾けた。法被姿で西軍をまとめ上げ、「この素晴らしい行事をしっかり守っていかなければならない」と表情を引き締めていた。