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私見公論
2017年10月13日(金)9:01

【私見公論】地域文化と新しい風/大城 裕子

 アカハラダカの舞う季節、当協会は「市民総合文化祭・一般の部」を開催(9月29日~10月1日)、会場となった中央公民館は多くの来場者でにぎわい、会員や市民の力作を囲んで交流の輪が広がった。展示された作品からは地域の文化力が感じられ、創作活動を通して日々の暮らしをより良いものにしていこうとする市民の前向きな思いも伝わってきた。太陽の光を求めて伸びる植物のように、目には見えないそれぞれの光に向かって伸びていこうとする姿がそこにあり、人々のそういう日々の営みも「文化」なのでは、と感じる季節でもある。

 この時期、宮古では実にさまざまなイベントが催される。既に終了しているものも含めると、なりやまあやぐまつり(8日)、カギマナフラin宮古島(6~9日)、こどもシアター(15日)、クイチャーフェスティバル(29日)、音楽祭(11月12日)、芸能祭(11月26日)等々。地域に根差した芸能を継承しようという催しから、観光とタイアップさせて新しい文化を創り上げていこうとする催しまで、実に多彩だ。民間主導、行政主導と実施形態はさまざまだが、イベントの数だけ開催にかける関係者の熱い思いがある。

 「クイチャーフェスティバル」は今年で16回目、初のJTAドーム宮古島での開催とあって、さらに趣向を凝らした大会となるようだ。「カギマナフラin宮古島」は、宮古島市とハワイ州マウイ郡の姉妹都市提携48周年を記念して2013(平成25)年に始まり、文化交流事業として推し進められている。今年5回目となった大会には県内外から多くのフラ愛好家たちが参加。昨年はギネス世界記録を達成するなど、島興しに一役かっている。フラ(ハワイ語で踊りを意味する)にはクイチャーと共通するものがある。それは、祈りである。人間にとって普遍的なものであり、自然崇拝と深く結びついていることが、関係者や参加者の心を掴み、宮古でイベントとして成長している理由なのかもしれない。

 新しい風を受け入れながらも、本来の地域文化を発信することを忘れないでいたい。既存のイベントの継続発展を図りながら、官民一体となって宮古に古くから伝わるクイチャーを全国、いや世界に発信するプロジェクトを立ち上げてはどうだろう。クイチャーフェスティバル実行委員会がこれまで築いてきたものが土台として既にある。先人たちが自分自身を鼓舞し、あらゆる感情を込めて踊り、暮らしを営んだ延長線上に私たちの今がある。先人の魂に触れながら、島中でクイチャーを踊る日があってもよいのではないだろうか。クイ(声)チャー(合わせる)で連帯感が醸成され、これからの時代を生き抜く底力にもなるだろう。また、伝統を変えない努力こそが、地域文化を魅力あるものとして存在させられる。変えない努力とそこからの可能性(創作)を両輪として、宮古が誇る芸能(精神)を、島を挙げて走らせてみては。

 沖縄県は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを文化芸術振興の好機であると捉えて、今年3月に「沖縄文化プログラムの展開にかかる基本方針」を策定している。コンセプトは『御万人往来(うまんちゅおうらい)!文化でひらく未来の架け橋』である。文化プログラムの展開にあたっては、社会的包摂の精神につながる「沖縄の心」と、海外交流を深めてきた「万国津梁」の精神に着目。あらゆる人々が参画、交流、協働できるよう、沖縄の文化芸術を国内外へ開くとともに、沖縄らしい文化スタイルを拓くことで魅力的な文化芸術やあらゆる人々が往来する架け橋としての「沖縄」を目指すとのこと。クイチャーも宮古から世界へ。海外から入ってきたフラも宮古でアレンジして、再び世界へ。地域文化が有する文化の厚みが沖縄の文化の基盤となる。地域の文化が豊かになればなるほど沖縄全体の文化も豊かになり、魅力が増していくであろう。

 地域文化を継承し、創造する担い手としての視点で、市民一人ひとりが宮古を見つめ直す時期かもしれない。

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