行雲流水
2017年11月30日(木)8:54
【行雲流水】(明日から師走)
「あたたかき十一月もすみにけり」(中村草田男)。季節感が乏しい南国とはいえ、空の雲、すすきの尾花、道行く人の装いに季節の移ろいが見てとれる
▼明日からは師走だ。動物たちは毛づくろいやエサ探しなど冬支度に余念がない。「社会的動物」人間も、仕事の年内仕上げなどを急かされそうだ。歳末助け合い運動や防犯月間などの行事も控えている
▼そんな折、詐欺に遭いかけた知人の体験談を聞かされた。有名デパートの店員を名乗る女性から「本日、カードで15万円のお買い物をなさったご本人かどうかのご確認です」との電話があったという。否認すると、「警察と銀行へは当方から手配しますので、ご安心ください」。しばらくして警察、銀行から事実関係確認の電話
▼追って、カード詐欺救済センターから「カードを封筒に入れ、3カ所に封印、その上からセロハンテープを貼ってください」とこまかい指示があり、「係りの者を行かせますから」。そこまでは丸信じだった
▼ふと「誰にも話さないように」と言っていたことが気になり、警察へ照会したところ〝カード詐取〟グループのからくりが判明したという。犯人と思しき人影は玄関のすりガラス越しに現れたが、パトカーの到着直前に消えたとのこと
▼他人事ではなさそうだ。ユニセフの募金広告で、アフリカの子どもたちの映像を見ると心が痛む。だが、「すぐ寄付しよう」とはならない。そのくせ、詐欺にはすぐ引っかかる。心の奥に潜む〝欲得〟のなせる業であるのかもしれない。年末は考えさせられることが多い。