仲間氏(琉大名誉教授)がタイムス文化賞
「蔡温と林政八書の世界」出版
【那覇支社】県内の学術や文学、出版文化への功績をたたえる「2017年度沖縄タイムス学術・出版三賞」贈呈式が7日、那覇市内のホテルで催され、平良荷川取出身の仲間勇栄琉大名誉教授が第38回沖縄タイムス出版文化賞を受賞した。同賞は、県内出版文化の向上と出版活動の振興を図るため、沖縄に関わる一般刊行物の中から優れた図書を選んで著者や発行所を表彰している。仲間名誉教授は、琉球王国時代の政治家・蔡温と、彼が強い影響を及ぼした森林政策などを解説した「蔡温と林政八書の世界」(榕樹書林)を昨年出版している。
表彰を受け、仲間名誉教授は「研究の集大成の一つが栄えある賞に選ばれて、とてもうれしい。林政八書を最初に訳したのは宮古の人だったので、宮古への思いも、より深くなった。いま、自然と人間の関係が崩れかかっている。自然を持続的、循環的に利用していくには蔡温時代の『抱護(ほうご)』の理論の実践が求められている。今後も体が続く限り、宮古を含めた研究テーマで何冊かの本を書きたい」と喜びを語った。
主催者で沖縄タイムス社の豊平良孝社長はあいさつで、各受賞者の功績を披露した。仲間名誉教授の著作については、「蔡温の著作の中で最も評価の高い実学の書として、明治期まで活用された林政八書が現代にも有効性があることを、琉球風水や農業経済学など他の領域の視点から提示している」と指摘。「しっかりとした翻刻や口語意訳は、本書の価値に厚みを加えており、歴史学の分野からの評価も高い著作」と紹介した。
蔡温は、18世紀に活躍した琉球の政治家。林業・農業・教育など幅広い分野で業績を残し、「琉球の五偉人」にも挙げられている。風水にも造詣が深く、屋敷や集落を取り囲む林など沖縄の伝統的な集落構造や、林業の運営にも大きな影響を与えた。多良間島では現在でも集落の林が残されているなど、蔡温が取り組んだ政策の影響は県内各地に及んでいる。