分娩事故、県内最悪/肉用牛
17年は子牛178頭死亡/経済損失1億円超え
宮古地区における肉用牛の分娩(ぶんべん)事故発生件数が県内最悪のペースで推移している。県農業共済組合宮古支所の調べで2017年は178頭が死亡。一年一産と仮定した母牛の頭数に占める発生割合は2・53%に達している。子牛の市場価格から算出する経済的損失は1億円超と大きい。県内他地区の発生割合はいずれも2%以下で、宮古地区の事故発生率の高さは懸念材料の一つだ。要因は、分娩時における管理の不行き届きにあるとみられる。
関係団体のまとめで、2015年度中の子牛死亡頭数は139頭、発生割合は1・77%と2%を割り込んでいたが、16年度は180頭が死に、発生率は2・42%に跳ね上がった。
県内各地区の発生割合をみると、北部1・70%、中南部1・68%と2%以下で推移する。八重山は0・81%とさらに低い。これらのデータと比較すると、宮古地区における発生割合の高さがうかがえる。
分娩時に死亡する事故は管理不足が主な要因に挙げられる。分娩時は原則として牛を放したり、分娩用のスペースを確保したりするのが基本だ。分娩に立ち会って事故が起きないよう見守る必要もあり、素牛生産飼養管理の上では最も注意を払う場面とされる。
宮古ではこういった管理が徹底されずに死なせてしまうケースが目立つ。高齢化の進行に伴う労働力の減退で、分娩時における臨機応変の対応が困難になっているという見方もある。
県農業共済組合宮古家畜診療所の金城肇所長は「立ち会っていないケースが多くみられる」という。分娩の時期を見誤り、母牛を牛舎につないだまま産ませる事例を挙げ、「牛をつないだままでは、産後の子牛をなめることができない」などと指摘。体温調整等で必要となる母牛の行為を飼養者の管理不足でおろそかにしないよう注意を促す。
事故を防ぐ方法としては▽牛を放す▽分娩のスペースを設け、産みやすい環境をつくる▽産み落とされる牛の衝撃を和らげるための敷きわらを置く▽立ち会う-などを挙げた。
また、農業共済では、分娩時の観察が容易になる昼間分娩を推奨。分娩2週間前から、午後4時以降に1日分の餌を1回で全部給餌すると、午前7時から午後11時に分娩する確率が高くなるとして生産農家に実践を呼び掛けている。
金城所長は「子牛を減らすことを減らす。これだけでも子牛は増えていく」と話し、分娩事故を減らすことの重要性を語った。