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行雲流水
2018年4月17日(火)8:54

【行雲流水】(最終講義)

 最終講義に当たって、人は最も重要と思うことを語るに違いない。時にそれは、時代の証言ともなりうる。書籍『最終講義』には十数人の碩学の「最終講義」の内容が収録されている

▼そのひとつ。東大教授矢内原忠雄は1937年『中央公論』に発表した「国家の理想」等の内容が、反戦思想だとして議会・民間右翼・軍部・大学内の右翼教授らの攻撃の的となり、辞職する。その後、個人雑誌『嘉信』を発行し、信仰を通じて人々に平和と真理を説き続け、戦後東大に復帰、51年から57年まで東大総長を務めた

▼氏は「終講の辞」で述べている。「学問本来の使命は実行者の実行に対する批判である。常に現実政策に追随しチンドン屋を勤めることではない」。「現象の表面、言葉の表面を越えたところの学問的真実さ、人格的真実さ、かかる真実さをもつ学生を養成するところが大学である」

▼社会学者の鶴見和子は「異質者とのぶつかりあいを恐れず、その中から新しい知的創造をしていこうとする自由な精神をもつよう」語っている

▼東洋史学者の貝塚茂樹(湯川秀樹の兄)は学問をするうえで大切なことは、「若い時にいい先生を得ること、中年にはいい友達をもつこと、晩年にはいい後輩をもつこと」と語っている。そのことは、学問だけではなく、どんな世界でも言えるのではないか

▼元平良中学校校長・与那覇寛長氏は機会があると好んで教壇に立った。最終講義の題材は、太宰治の「走れメロス」であった。黒板に大きな字で書いた「信実」が印象に残る。

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