重圧に耐え強人の走り/トライ大会
加持さん、亡き父へささぐ完走/表情晴れ晴れ、完走12回
全日本トライアスロン宮古島大会は22日、1270人が完走し、感動のうちに幕を閉じた。宮古島市の加持岳志さん(46)は12回目の完走。前回は大会前に父が亡くなって出場を辞退したため、今大会に懸ける思いは特別だった。約束のゴールにたどり着き、「完走できて良かった」。目標達成にも涙はない。晴れ晴れとした表情で語った。
「父が、周囲に自慢してくれていたというトライアスロンで再び完走し、天国でも自慢してもらえるように頑張りたい」。加持さんが今大会の出場申込書に添えた自己PR文だ。
前回は出場が内定していたが、大会1週間前に父の郁也さんが他界。葬儀のため出身の横浜に戻り、トライアスロンは辞退した。
そんな父が、息子の完走を誇りにしていたことを聞いた。「もうやるしかないでしょう」。加持さんは再び限界への挑戦を始めた。
だが、レースではいつもの調子が出ない。重圧からか体が動かず、特にランニングがうまくいかない。最も得意な種目なのにゴールが遠く、日が落ちても競技場にたどり着けないのは初めてのことだった。
ゴールは制限時間残り30分を切ってから。「帰ってこられて良かった」と胸をなで下ろし、「12回の経験の中で、一番大きな応援をいただいた。一人一人にお礼がしたい」と話した。
レース中、父郁也さんのことは「ちょっとだけ考えましたね。だけど、励みよりもプレッシャーになったかも」と話す。「父よりも生きている皆さんの応援がすごかったから完走できたんです」と沿道の声援に感謝し、「父には、ぼくが多くの人に支えられているということを見てもらえたと思う。これからも天国からその姿を見てくれれば」と笑みをたたえて話した。
加持さんの走りに「ひやひやした」と話すのは妻の旬見(まさみ)さん。「毎回明るい時間帯に帰ってきていたので心配だった。でも無事に帰ってきてくれて良かった」と安堵(あんど)し、踏ん張った夫に拍手を送った。
トライアスロンに出てみたいと話す息子の楽空(がく)君は「お父さんは格好良かった。頑張って帰ってきてくれた」と喜んだ。