ミカンコミバエが急増/17年度多良間、八重山
過去最多の侵入数/誘殺件数81件、誘殺虫は116頭
県内では1985年に根絶が確認されているミカンコミバエの侵入数が2017年度は過去最多となったことが分かった。特に多良間と八重山への侵入数が多く、多良間では38頭、石垣で39頭、西表で20頭、竹富島で10頭などとなり、合計の誘殺件数は81件で誘殺虫数は116頭となった。近年、先島での侵入件数が増加傾向にあることから、県病害虫防除技術センターでは防除対策の徹底を呼び掛けている。
今回の侵入状況については、28日に行われた特殊病害虫防除対策およびカンキツグリーニング病防除対策宮古支部会議の中で報告された。
ミカンコミバエは、マンゴーなど300種以上を加害する世界的重要病害虫。果樹の果実に卵を産み付ける習性があり、1~2日後に発生する幼虫によって果実そのものが食害を受ける。
ミカンなどのかんきつ類だけでなく、マンゴーやパパイアを食害するほか、トマトやピーマンなどの野菜も寄主とされている。
食害を受けた果実は商品価値を失うため、県など関係機関は根絶後も定期的なトラップ調査を実施して発生を防いできた。
これまでのトラップ調査による誘殺件数は、2014年度の60件、81頭が最多だったが17年度はそれを上回った。また、多良間以外にも宮古では宮古島で1頭、伊良部でも2頭が同年度に確認されている。
誘殺件数が急増したことを受けて17年度は、多良間と石垣、西表でまん延する前に初期段階で防除する初動防除(誘殺板の設置やベイト剤散布など)を実施した。
多良間では、対策の結果7月24日以降の確認はなく、9月に対応措置は解除された。
広範囲で侵入が確認された石垣島と竹富島では昨年10月にヘリ散布などによる全域防除が実施された。
失敗すれば「移動規制」となっていたが、今年4月までに誘殺が確認されなかったことから対応措置は解除されている。
同センターの佐渡山安常班長は「台湾などの近隣諸国には生息しているので先島は常に再侵入の危険がある。それでも、30年以上も『根絶』状態を保っていることは関係機関や農家の連携のおかげ」と話した。
さらに、佐渡山班長は再定着とまん延を防ぐために関係機関としての指導努力のほか、再侵入リスクの増加を認識するとともに、栽培管理の改善(未利用果実や収穫残さの処理▽適切な枝切りと除草)を呼び掛けた。
ミカンコミバエの寄主対象となる果菜類の県外出荷額は23億5000万円(13年時点)となることから、被害が広がり移動規制となればその被害の大きさは計り知れない。
実際に16年には鹿児島県の奄美大島、徳之島、屋久島でミカンコミバエが再侵入による移動規制で、奄美では7億円以上の柑橘類が廃棄されたほか、緊急防除費用として約4億円(屋久島、徳之島含む)の費用もかかっている。
防除について、佐渡山班長は「特にグアバへの被害が目立つので、もし、家庭にあるグアバの木の実が落ちてもそのままの状態にしないで、処分するなどしっかり管理してほしい」と呼び掛けた。
ミカンコミバエ 1919年、沖縄本島の嘉手納で確認された。22年にはかんきつ類の県外出荷が禁止されるとともに、果実の被害が多発。果樹振興にとって大きな阻害要因となった。72年に根絶防除事業がスタートした。成虫に正常な交尾の機会を与えない「雄除去法」を用いた結果、根絶に成功し、県全域のミカンコミバエ発生地域指定が解除されている。