行雲流水
2018年7月7日(土)8:54
【行雲流水】(たなばた)
七夕。中国由来の五節句のひとつといわれる。本来旧暦7月7日の夜に祝う祭事であったものが明治の改暦で新暦での行事となった。しかし宮古島では今でも旧盆入りの7日前をタナバタといってお墓の掃除をして供え物をして先祖にお盆であることを伝える神事となっている
▼誰でも知っている織姫と彦星の出会いの話は宮古島のタナバタには馴染みようがない。もともと中国の「しちせき」が7月7日の夕刻に精霊棚を造り死者を弔う神事であったと言われていることからすると宮古島のタナバタは中国の七夕(しちせき)に近いものと言えるかもしれない
▼日本古来の「棚機津女(たなばたつめ)」の伝説も捨てがたい。穢れのない巫女が棚機津女となってただ一人水辺の機屋(はたや)で機を織って織物を7月7日には仕上げなければならない。仕上げた織物を神に捧げ、水辺で禊を行い神となって人々に豊穣をもたらし厄災を除けるとされている
▼宮古島にも一人水辺で機を織る女性の話がないわけではない。保良東平安名岬のマムヤは色白でいい香りのする女性であったといわれる、それゆえに神ならぬ者たちの横暴に晒されて神になることができなかった
▼ともあれ「古事記」のなかで神々のいさかいの果てに「天なるや 弟棚機(おとたなばた)の項(うな)がせる玉の御統(みすまる)…」と詠われた歌の「弟棚機」(乙登多奈婆多)が七夕の語源といわれている
▼今夜の七夕まつりは、五色の短冊に願い事を書いて天を仰ぎながら古代の中国に行き来して仏の教えを請来しながらも神代神話を古事記や日本書紀に残した奈良時代の人々の偉大さに思いを馳せるのも一興かもしれない。(凡)