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行雲流水
2018年8月9日(木)8:54

【行雲流水】(世論)

 満州で生まれた作詞家なかにし礼は、小学1年生の夏休みにソ連軍の侵攻に遭った。1年余の逃避行の末、命からがら日本にたどり着いたという。作詞の原点を問われて、「戦争への恨みだ」と語る。それを男女の心象風景に仮託しているだけだ、と。作品群には、昇華の苦心が読みとれる

▼罪を憎んで人を憎まず。小学生のころ教わった言葉だ。「けんかをするな」との講話のときだった。孔子やキリストのエピソードがあり、「裁き」の奥義として教わった

▼ところが中国や韓国では、日本の「侵略戦争」を憎むのではなく「日本人」を憎んでいる。日本人は日本人で「軍人のせい」にして、一種の免罪符にしている。先の箴言(しんげん)やなかにし礼の話と、深刻さが違うように感じる

▼中国や韓国では学校教育ですりこむというから、民族主義運動の一環であろう。日本の場合はどうだろうか。時代が変われば、後代の目で前代を批判するのは当然だが、どこかヘンだ

▼満州事変で始まる〝15年戦争〟は、軍部に同調する国民世論があり、議会での軍事予算通過があって可能になったはずだ。このことを国民自ら反省することなく、敗戦後はGHQに判断を〝おまかせ〟している。日本人には、他人の考えに依存する傾向があるのだろうか

▼日本人の国民性としてよく耳にする言葉は、勤勉さ、礼儀正しさ、繊細さなどだ。「短絡的な面がある」とは聞かない。情緒的体質は「煽動」に弱い。「世論」と「煽動」は不可分かもしれない。「付和雷同」が日本人の弱点かも、と思ったりする。(柳)

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