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行雲流水
2018年9月4日(火)8:54

【行雲流水】(ピケティの資本論)

 格差の拡大は世界的に問題になっているが、フランスの経済学者ピケティの著書『21世紀の資本』は、格差問題を膨大な資料で検証し、解決策を提言したもので、世界的なベストセラーになっている

▼ピケティによると、資本の収益率が、給与等の経済成長率を上回れば上回るほど、富は資本家に蓄積される。200年間のデータ分析によると、資本の収益率は約5%で経済成長率は1~2%である

▼持てる者が富み続ける社会的構造が出来上がっており、格差拡大を自然に解消するメカニズムは存在しない。政治的に解決するしか方法はない。「累進所得税」、「累進相続税」、「資本税」の3税で、富を再分配することをピケティは提言する

▼また、成長と格差縮小は同時にするべきで、まず成長、その後に格差の是正という考えの誤りを指摘する。一時、富裕層や大企業を豊かにすると、富は国民全体に、したたり落ちる(トリクルダウンする)と主張する人たちもいたが、これが誤りであることは、大企業が内部留保を増やし続けていることでもわかる

▼実際には、ピケティの格差解消理論の実現は困難を伴う。国の東西を問わず、多くの政府や政治家が富裕層の利益を第一に考えるからである

▼アメリカのCEO(最高経営責任者)の平均給与は15億円である。一方で、5人に1人の子どもが貧困線(1日130円)以下の暮らしをしている。「再分配を強化しないと、日本もアメリカのような格差社会になる」とOECD(経済協力開発機構)は警告している。格差問題はひとごとではない。(空)

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