【私見公論】島尻 郁子/スペシャルな敬老の日に思うこと
6月中旬、初孫が誕生した。
先月上旬、2人目の孫が産声をあげた。
夫と共に大過なく還暦を迎え、「敬老」の文字が踊る9月。「おじいちゃん・おばあちゃんおめでとう」のメッセージを初めて手にし、喜びに浸り感謝にあふれる日々はまさにスペシャルである。
NPO法人を立ち上げ微力ながら相談窓口として6年目。先日、宮古商工会議所女性会チャリティー芸能祭からの寄付金を頂いた。
地域の優しさを若者に届ける活動にもっと頑張るようにとエールを受け取った時に、父が残してくれた言葉「地域の皆さんに支えられていることへの感謝を忘れないでほしい。隣近所の皆さんに感謝を伝えてほしい。母ちゃんを大事にしてほしい」を思い出した。
ソーシャルワーカーとして、地域の課題に寄り添うことを決意し、これまで多くの家族間の問題に対応させてもらったが、産まれたばかりの新しい命を胸に抱きながら、改めて地域の本当の豊かさを願う気持ちが強くなり、この小さな命に残せる何かを求める心の旅がまた動き出した。
子宮頸がんワクチン副反応で多くの犠牲を背負いながら歩み続ける若者がいる。
両親や家族間の不和に悩み、居場所を失い、原因不明の壮絶な痛みと闘う若者がいる。
誰からも愛情をもらっていないと孤独に浸り長年引きこもりを続けた若者がいる。
自分のやりたいことが見つからず、ゲームに心と時間を奪われ、彷徨(さまよ)う若者がいる。
この若者たちも、誕生した時は、家族の愛の中で多くの笑顔に包まれ、希望を託された一人一人であることを思う時、彼らを取り巻くさまざまな環境や家庭の中に、それぞれの解決の糸口が、一日も早く見つかることを願い、そのつらい経験が益となるように祈る思いである。
わが家庭を振り返っても、4人の子どもたちを育てていく道のりにさまざまな課題が与えられたことも、新しい家族が増えたことにより、全てが感謝に変わっている。
予期せずして突然の病や精神的な痛みから青春のただ中をのびのび過ごすことができない若者にもっと多くの理解と支援と励ましを求めたい。居場所を求めながら帰る家を探している人たちにもっと多くの愛を示したい。
読書の秋の気配が連れて来たかのように、故前県知事の語録を綴った本が話題になったので手にしてみると『その後ろ姿を見せることで、子や孫がその思いを吸収し、彼らなりに沖縄の将来を担っていくことにつながる。私たち責任世代の役割はそこにあるのではないか』が心に留まった。政治の世界で発せられた言葉であるが、課題を抱えた若者に何を示し、どのような姿勢を見せればよいのかを深く考えさせられた。責任世代の役割、若者たちの抱える課題に応える私自身が、自己満足からではなく、感謝を込めた地域貢献をさせていただき、孤独と闘う若者に『あなたは決して一人ではないよ』と励まし支える言葉かけや、自分なりの後ろ姿を吟味しながら過ごすことが、今の私にできる精いっぱいのソーシャルワークであり、歩み続ける心の旅は、(あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している)(すべて疲れた人、重荷を負った人はわたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます)の聖句が、あらたな支えとなり、一日一日、できることが増えていく孫の成長が勇気づけてくれる。
敬老の日の行事が各地で行われている今日この頃、口先だけで本当の愛を行わなかったことを悔い改め、地域への感謝を伝える者に、老いてなお『母ちゃんを大事に』と何度も語った父の後ろ姿から、父・母を敬うことが幸せにつながることを伝える者になりたいと思う。
敬老特集、輝く笑顔がその日限りの笑顔とならないように、その笑顔とその笑顔を支える一人一人の人生が豊かになりますようにと祈りつつ、今回はこれで…。
(NPO法人あらた理事長・社会福祉士)