サシバ 保護の輪を世界へ/日本自然保護協会主催
生息数減少に警鐘/専門家5人が展望語る
日本自然保護協会主催の市民カレッジ「宮古から世界へ広がるサシバ保護」が13日、伊良部中学校体育館で開かれた。専門家5氏が講師を務め、サシバ保護の必要性や各地で行われている取り組み、今後の展望などを語った。
講師を務めたのは宮古野鳥の会顧問の久貝勝盛氏、アジア猛禽類ネットワーク会長の山﨑亨氏、オオタカ保護基金代表の遠藤孝一氏(市貝町観光協会副会長)、岩手大学農学部講師の東淳樹氏、日本自然保護協会副部長の出島誠一氏。
久貝氏は「伊良部中学校とサシバ保護」と題し、同校が県の環境モデル校になってからの取り組みを紹介。生徒らによる活動でサシバを捕獲してはいけないということが地域に浸透し、伊良部での密猟がなくなったとの認識を示し、「伊良部中学校なくしてサシバ保護は語れない」とその功績をたたえた。
「宮古島から世界へ広がるサシバ保護」をテーマに語った山﨑氏は、サシバが多く飛来するフィリピンのミンダナオ島でも以前の宮古島のように密猟が行われていたことを説明。密猟をなくすため2015年から地元大学が中心となって密猟根絶プロジェクトが始動し、さまざまな保護キャンペーンに取り組んだ結果、約2年で密猟撲滅に成功したと報告した。
飛来したサシバが卵を産み、子育てを行う栃木県市貝町から訪れた遠藤氏は「サシバの里・市貝町の地域づくり」として同町による「サシバの里づくり基本構想」を紹介した。人とサシバが共に暮らせる環境を未来に引き継ぎながら地域を活性化させるため、環境と経済が両立するまちづくりを目指していることを説明。保護の輪を世界に広げるため来年、同町で「第1回国際サシバサミット」を開催することを報告した。
東氏は「サシバ保護に必要な研究と保全」をテーマに、生息数が減少しているサシバの保護の必要性を指摘。保護活動として餌の狩り場の創出や人口巣設置などに取り組んできたことを紹介した。今後、必要なこととしては、巣立ちしたひながどこで繁殖するかや山で暮らすサシバの生態の解明などを挙げた。
出島氏は「伊良部島・下地島サシバの森づくり構想」と題し、日本自然保護協会が行政や地域住民らと協議会を立ち上げ、サシバが飛来する島の自然を守るため「サシバの森づくり基本計画」の策定に取り組んでいることを説明。今ある森を守るとともに、新たな森を増やすことを目指す考えを示した。
会場には伊良部中学校の生徒をはじめ地域住民らが参加。5氏の話を聞き、サシバ保護について学んだ。