行雲流水
2018年10月18日(木)8:54
【行雲流水】(生産性Ⅱ)
経営コンサルタントの方に同行して、東京の電子部品組立会社を訪ねたことがある。目的の階でエレベーターを出たとたん、同行の氏がつぶやいた「この会社は、もうかっていないな」
▼従業員の動作を見ればわかると言う。エレベーター内の表示ボタンを「階数」→「閉」の順で押していた。扉が閉まるのに3秒かかる。先に「閉」ボタンを押すのが合理的だ、と
▼たった3秒の遅れで、なぜ会社の赤字が読めるのか疑問に思った。はたせるかな、会社の幹部の話を聞くと、業績はあまり芳しくない模様。帰途、同氏に疑問をぶつけてみた
▼生産性向上への取り組みは、業種や業態によりテーマが異なる。細かい部品の組立工場では、〝秒〟単位の「動作」の合理化が対象だ。損益は、この秒単位の差の積み重ねで決まる。業績の良い会社なら、全社員にムダをはぶく意識が浸透しているはずだ、と言う
▼日本が工業化に成功した理由が納得できた。日本の鉄道が世界一の正確さで運行されている理由も想像することができた。同時に、本土に就職した沖縄の子どもたちのことが気になった
▼万事おおらかな沖縄で育った子どもたちだ。〝秒〟単位の世界は窮屈であろう。時間感覚だけではない。「公私の区別をはっきりさせよ」と言われて、助け合いや思いやりの心が痛むことも多々あるのでは。〝場〟が違えば基準が違う。環境の変化に適応するためには、ギア・チェンジが必要だ。心の金属疲労を起こすことなく、たくましく成長してほしいとの思いがつのった。(柳)