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行雲流水
2018年11月15日(木)8:54

【行雲流水】(人手不足)

 「第3子を出産すれば、農地を無償贈与する」。フランスのマクロン大統領は、耕作放棄地を国が買い上げて農業就業人口を増やす手段に使うことを考えたようだ。農業振興と少子化対策の一石二鳥だ

▼だが、国民の反応はイマイチだ。子ども2人を抱えた農家の主婦は「子育てに時間をとられて農作業に出るヒマがない。これ以上農地を増やそうとは思わない」と語る

▼所変わって、こちらは宮古島。K氏は寸暇を惜しんで働き、生活費を切りつめて畑を買い増し、十数台のサトウキビ出荷を誇る模範農家になった。だが、一人娘に「畑の多い農家に入り婿は来ない。難儀するだけだから」と言われ、寝込んでしまった

▼フランスでも宮古でも、農家の悩みは似通っている。都市の人手不足は賃金水準の上昇を招く。働き手は都市へ流れ、農家は人手不足に。耕作放棄地は増える傾向にある

▼18世紀の産業革命以来、土地の生産性(1坪当たり稼ぎ高)は農業、工業、商業の順で高くなっている。食料需給の将来はどうなっていくのだろうか。日本の食料自給率は38%だという(カロリーベース)

▼農産物の価格が上がれば、農業就業者は増えるが都市生活者の家計は苦しくなる。その調和点を求めて、政府は外国人労働者の導入を図ろうとしている。グローバルな視点で解決策を模索するのもいいが、足元の技術開発努力を忘れてはなるまい。高収入作物、台風、病害虫などの研究開発課題を克服する仕組みづくりや予算の拡充にも英知と熱意を傾注してほしいものだ。(柳)

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