途絶えた祭祀の復活探る/神と森を考える会
伊良部の伝承文化で意見交換
第25回講演とシンポジウム(主催・宮古島の神と森を考える会、伊良部自治会、宮古伝承文化研究センター)が「伊良部の神・人・自然」をテーマに25日、伊良部島の東地区構造改善センターで開かれた。地元で祭祀に携わる元ツカサや男の神役、カンカカリャ、宮古の祭祀などを研究している研究者らが出席。パネル討論では「伊良部の祭祀の復活を目指して」をテーマとして行われた。
5年前からツカサが誕生しないため、途絶えたままの祭祀を復活するためには「まずはツカサの負担を無くすこと。祭祀を昔のまま継承するのではなく、時代にあった祭祀の在り方を考えていく。ツカサの年齢をあげる」など、なかなかツカサのなり手がいない現状を解決していくための方策について、それぞれの立場から意見発表や提言を行った。
講演とシンポジウムでは「神と森を考える会」の会長で明治大学の居駒永幸教授の基調報告、同会事務局長の佐渡山安公さんの「伊良部の祭祀」と題したビデオ報告、関西学院大学の島村恭則教授の「現代と伝承-『無形文化遺産』の視点から-と題した講演などが行われた。
佐渡山さんのビデオ報告は、伊良部島で長年撮り続けた数多くの祭祀が編集された映像で、古くは26年前の映像や、今は行われていない伊良部ピャーズの芋ダミニガイ(芋の豊作)、1999年ごろの伊良部のユークイなどが紹介された。
現在も盛大に行われている佐和田、国仲、仲地、長浜のユークイなどの映像で集落の人々が祭りを楽しむ姿に、参加者は歓声を上げていた。
関西学院大学教授の島村恭則さんの講演では「伝承は地域の人々にとって、地域のアイデンティティーや誇り、自信を育み、表現するものである。そして有用かつ必要なもの。それゆえに主体的に選択、活用され絶えず創造されてきた。伝承は人々の幸せのためにある」と結んだ。
パネル討論の司会は居駒会長と佐渡山さんが務めた。バネラーは島村さん、狩俣恵一特任教授(沖縄国際大学)、内田順子准教授(国立歴史民俗博物館)、地元から川満勝彦会長(伊良部自治会)、池間藤夫さん(元皿ヌ主)、狩俣初枝さん(元ユーヌンマ)の8人。
「伊良部の祭祀の復活を目指して」をテーマにパネリストがそれぞれの意見を述べ、会場内からも、質問や意見が活発に飛びかった。
伊良部では年間36回の祭祀がある。ツカサの負担を考えると祭祀を減らし祭祀のやり方も見直す。ツカサの年齢や他の神役などについても見直しが必要ではないかとの声もあった。
元皿ヌ主の池間さんは「祭祀の中で見直すべきものは見直す。現代に即したかたちに変えてもいいと思っている」と述べた。
最後に川満会長は「何とか祭祀の復活をしていきたい。部落の皆さんと話し合い、時間は掛かるかも知れないが実現したい」と述べた。