行雲流水
2019年1月31日(木)8:54
【行雲流水】(鈍感力)
昔の人の〝千里眼〟には、びっくりする。作家へミングウェーは、4㌔メートル先のうさぎを見つけたという。インディアンは鉄道レールに耳を当て、列車の来る時刻を「1時間後」と測定したという
▼現代人は、文明の恩恵に浴し過ぎたためか、本来備えていたはずの感覚を鈍化させてしまったようだ。生来の〝動物的〟感覚を保持している子どもは「神童」と呼ばれたりする
▼長じて「過ぎたるは及ばざるがごとし」を実体験するにつれ、神童も普通の人になっていく。資質の優劣やものの見方の基準は〝場〟によって違うことを学ぶからであろうか。「鈍感力」(渡辺淳一著)がベストセラーになったりする
▼最近、脳しんとうを起こして聴覚障害4級の手帳を交付された知人がいる。聴覚レベルは60デシベル(健常者は40デシベル)だという。電話による対話は危なっかしいので、メールを多用しているとのこと
▼その彼が、耳が不自由になって分かったことがあると言う。日常の会話で真に重要な話は意外に少ない。10の話題のうち、せいぜい二つか、三つだ。無駄な議論に多くの時間が費やされていることを初めて知った、と言う
▼聴覚機能の退化を補完するため、眠っていた機能(第六感とか心眼とか)が目覚めるのであろうか。「多様な見方がゆるされている領域では、是か非かで割り切る必要はない。たいていのことは60点で及第だ」と言う。約束ごとや契約の世界とは違う世界がある。ビジネス感覚と生活感覚とは違う。その違いを仕分けるコツを体得したのかも。(柳)