双子の雌牛が誕生/多良間
豊見城さん「二重の喜び」 受精卵移植で村内初
【多良間】多良間村の畜産農家で人工授精師の豊見城玄弘さんがこのほど、受精卵移植で双子の雌牛を誕生させた。村内では初めての成功になる。移植した受精卵は、「隆之国」「安福久」「百合茂」という優れた血統が絡み、肉質の上物率が高くなる特級の掛け合わせだ。豊見城さんは「成功できて感激している。将来的には多良間で採卵までいけるように取り組み、ブランド化を図りたい」と畜産振興に意欲を見せた。
受精卵移植は血統の良い卵を母体から採卵し、別の牛に付け替える技術。成功すれば優れた個体が産まれる。雌牛の場合は母牛として保留し、次の素牛生産で活用することができる。
村内で唯一、受精卵移植の資格を持つ村山武範さんが昨年4月、豊見城さんの牛に受精卵を移植した。
最高級の卵は宮崎県から取り寄せた。多良間家畜市場に素牛(子牛)を買い付けに訪れる購買者の森ファーム代表の森義之さんの厚意があったという。
豊見城さんは、「森さんから『和牛の改良に役立ててもらえれば』という言葉をいただいた。本当にありがたい」と感謝した。
移植後はエコー検査をはじめビタミン、ホルモン剤の投入を含めて細心の注意を払って分娩を待った。
この結果、1月26日に雌牛2頭が産まれた。豊見城さんは「受精卵移植に成功して、偶然とはいえ、雌で双子が産まれた。二重の喜びになった」と移植の成功に誇らしげ。「人間の手で受精した卵がこのような素晴らしい結果を出せたことに感動した」と話した。
雌牛につけた名前は「おおさかちゃん」と「なおみちゃん」-。プロテニスプレーヤーで先日の全豪オープンを制した大阪なおみの名前から取ったという。
受精卵移植について豊見城さんは、「多良間村内に受精卵移植を導入しやすい環境をつくりたい」と意気込む。「多良間には85の畜産農家がいる。受精卵移植のマニュアルをつくり、他の農家にも情報として提供していきたい。多良間に来たら、こういう良い牛の購入ができると言えるような魅力ある素牛産地づくりに励みたい」と話した。