家賃の値上げ相次ぐ/宮古島市
月額3万円増の提示も/背景に急変する社会構造
宮古島市で、アパートなど共同住宅の家賃の値上げを通告されるケースが相次いでいる。高いところでは月額3万円の増額が提示されているという。空前の建設ラッシュに伴い作業員ら一時的な居住者が爆発的に増え、市内の共同住宅はほぼ満室の状態だ。こういった住宅事情が反映される家賃の相場及び慢性的な人手不足という社会構造が値上げの背景にある。
家賃の値上げは、昨春ごろからじわじわと増え始めた。県消費生活センター宮古分室には10件前後の相談が寄せられている。
件数は多くないが、「2000円や3000円程度の値上げの場合は相談に来ていないのではないか」とみており、値上げを提示されている住民の実数はさらに多いという見方が強い。
本紙の取材に応じた市内不動産会社の担当者は「確かに(家賃の値上げは)起きている。大家さんの要望がある」と明かした。
昨年暮れごろから百世帯以上で値上げの通知があるといい、上げ幅は1万円前後が多く、入居者からの相談が後を絶たないという。
理由は、周辺物件と比較して家賃が合わなくなったことが挙げられる。ここ数年の建設ラッシュで共同住宅が乱立。完成後は住宅不足を反映するかのように入居時の家賃が高く設定されているのが現状で、こういった比較対象建築物の増加が値上げに拍車を掛けているものとみられる。
部屋の水回りや電気設備等の修繕を行う業者の作業単価が上昇していることも大きい。現場の人手不足が重なって以前の単価では取り合ってくれないという。
ここ1~2年で膨れ上がった住宅市場の将来的な反動を懸念する声も多く、数年後の借り手不足に対する備えという見方もある。
家賃の設定は、原則的に貸す側と借りる側の合意によって成立するが、「事情の変更」という条件を満たせば値上げを請求することができる。
事情としては▽土地・建物に対する租税その他の負担の増減▽土地や建物の価格の上昇や低下▽経済事情の変動▽近傍同種の家賃と比較して不相当になった-などがあり、宮古島市において値上がりが起きる背景には、このような社会構造があるものとみられる。
ただ、このまま相談が増え続けると、住民の権利や利益が絡む消費者問題に発展する可能性がある。値上げの幅が妥当なのかどうかという点において争う構えを見せる住民もいて、家賃の値上げをめぐる騒動は当面収まりそうにない。
大きな値上げを提示された住民の一人は、「突然の値上げは生活に直結するのでとても厳しい。だが、出ていこうにも次の部屋が探せない」と話し、結果として便乗値上げに見えてしまう現状に憤りを示した。
県消費生活センター宮古分室では「一人で悩まずに相談を」とセンターの活用を呼び掛けている。相談や問い合わせは宮古分室(電話72・0199)、または消費者ホットライン(188番)まで。相談に訪れる際には契約書と値上げの通告書を持参すること。