林業遺産に多良間「抱護林」
日本森林学会が選定/県内初、蔡温の政策で植樹
「林政八書」と共に
【多良間】日本森林学会はこのほど、多良間村の「抱護林」を2018年度林業遺産として選定した。琉球王朝時代における蔡温の林業政策で植樹されたもので、蔡温の主義主張が反映されているといわれている。県内では唯一、良好な状態で存在する。伊良皆光夫村長は「先人が守ってきた遺産であり村の財産。未来へ引き継ぐ大事な文化遺産として後世に引き継いでいきたい」と話した。村によれば、林業遺産は県内初。14日に県庁で認定証の伝達式が行われる。
日本森林学会によると、林業遺産の対象名は「琉球王朝時代の多良間島の『抱護』と『林政八書(同書研究会、浦添市)』」。
抱護林は、仲筋のトカパナ山から塩川の白嶺山までの約1・8㌔、幅10㍍~15㍍にわたる。1974年に県の天然記念物に指定された。集落の周囲を取り囲むように形成されており、台風や潮風から集落や農地を守ることから抱護林と呼ばれている。
同村教育委員会によると、県内で最も保存状態が良好で、一部消失している箇所もあるものの現在でも集落や農地の保護に不可欠となっている。
伊良皆村長は「今後は、林業遺産として住民の意識を高めることが重要になる」と述べ、抱護林の持つ意義を十分説明して理解を求めていくなどの保護活動を進める方針だ。「歴史的景観の保全は、村の知名度を高めることにもなる」と観光産業への波及効果へも期待した。
林業遺産は、日本森林学会が設立100周年を記念して2013年度から認定を始めた。
日本各地の林業発展の歴史を、将来にわたって記憶・記録していくための試みとして、林業発展の歴史を示す景観、施設、跡地等、土地に結びついたものを中心に、体系的な技術、特徴的な道具類、古文書等の資料群を認定している。
これまでに全国で31件が認定されており、18年度は多良間村などを含む4件が新たに認定された。