祈りの魂、永遠に/ナナムイシンポジウム
写真家の長崎さんら提言/「カギクゥトバ」の継承を
平良西原で継承される伝統祭祀(さいし)「ナナムイ」を考えるシンポジウムが9日、西原公民館であった。西原出身の写真家長崎健一さんや元ナナムインマ(御嶽で祈る女性)らがパネリストを務め、御嶽に響く「カギアヤグ」(神歌)と「カギクトゥバ」(美しい言葉)に触れ、「ニシムラ」の人々の生活の基盤をなすナナムイの重要性を説いた。
このシンポジウムは、長崎さんの写真集「カギナナムイ」の出版を記念して開かれた。パネリストは長崎さんと元ナナムインマの赤嶺和子さんのほか、宮古郷土史研究会の会長を務める下地和宏さん、アイランダーアーティストで宮古フツ(方言)を歌で守り続けている下地暁さんの4人。ジャーナリストの諸見里道浩さんがコーディネートした。
長崎さんは写真集について、「時代が変わっても変わらないもの、不変的な祭祀の世界があることを多くの人に伝えたかった」などと話し、今もなお継承を続けるナナムインマに対して尊敬の念を込めた。
赤嶺さんは、時代の移り変わりとともにナナムインマのなり手がいない現状を指摘しながらも、「2人でも必死に守っている。そのおかげでニシムラは栄えている。ニシムラの人たちの絆は強く、2人を見ていると心配はないが、これからはどうなるのか。続けてほしいと思う」と話した。
下地暁さんは、神歌を挙げて「歌は祈り。方言もクイチャーもそうだが、単なる伝統の文化ではなく、世界に誇れるものだ。それが失われるとしたら、とても悲しいこと」とナナムイの未来を憂えながら語った。
下地和宏さんは西原住民のエネルギーと祈りの文化に視点を当て、「分村の歴史の中で、村をつくるんだという人々の強いエネルギーが根っこに形成されているのではないか。そのエネルギーが今につながっていると思う」と話し、歴史の背景とナナムイを継承する精神の源を重ね合わせた。
シンポジウムには西原住民のほか多くの市民が参加してパネラーや元ナナムインマの話に耳を傾けた。
ナナムインマを務めたことがある女性は「大事なナナムイを、この先100年も千年も引き継いでいけるように、みんなで考えていきたい」と希望した。
別の女性は「私たちをこんな風に写真に残してくれてありがとう。私たちは周りの支えのおかげで続けることができた。もっと多くの人に関心を持ってもらいたい」と話し、長崎さんの写真展から広がる継承意識の高揚に期待を込めた。
元ナナムインマの声に長崎さんは、「ナナムインマが100人を超えた時代もあるが、たった2人でも継承したという事実はとても大事な出来事だと思う」と敬意を表し、「写真を撮りながら御嶽で聴く歌、言葉の数々は本当に素晴らしく美しい。言葉の継承がいかに大事かということをかみしめている」と語った。