【私見公論】新里 隆/「新たな時代に安全第一・命どぅ宝を継承する」
宮古空港のロビーは多くの人でにぎわっている。16年ぶりに宮古へ着任して一番感じたのが、人と車の多さだ。クルーズ船が停泊した日のスーパーは混雑し、道路も渋滞している。伊良部の海岸沿いはホテル建設が進み、平良も多くのアパートが建築中である。宮古島はバブル状態にあり、地価は上昇し、アパートも不足していると聞いていた。以前は伊良部へフェリーの移動も風情があり、島での時間を楽しみながら仕事ができた。仕事以外にもダイビングやみやこ焼の佐渡山先生の指導を受け陶芸に磨きをかけ、非常に充実し貴重な2年間を過ごせた。当時のゆっくりとした宮古の時の流れが私は心地よく、忙しく感じる宮古島の今の状況が少し寂しく感じる。
労働基準監督署の主な業務は労働災害防止に係る指導、労災保険の給付調査や労働保険の年度更新受付(申告手続きは7月10日まで)、そして働き方改革に関する労働時間等の指導業務である。
宮古地区は公共工事、アパート・ホテル工事、観光関連の事業が好調である一方、平成30年の労働災害(休業4日以上)の発生状況は過去最多で年間52名の方が仕事中に負傷し休業している。特に建設現場の足場から墜落や建設機械に接触するなどの負傷された方は18名、建設現場での労働災害が前年の2倍も増加している。5月に宮古地区の労働災害発生件数が過去最多となっていることから、宮古労働基準監督署は建設業労働災害防止協会宮古分会へは建設現場の安全対策の徹底を指示し、国・県・宮古島市・多良間村の各発注機関へパトロールの実施と過重労働にならないよう柔軟な工期の配慮要請を行っている。
労働災害は事前に安全対策を講ずることで防げる。特に建設現場での対策も足場に手すりを付ける・開口部に養生をする・建設機械の作業半径内に人を立ち入らせないなど、極端に言えば「事前」に安全対策を行っているか・否かの違いで災害発生の有無は生ずる。また、人はミスすること(ヒューマンエラー)を前提に、その対策(リスクマネジメント)を講ずることも必要である。いまだ建設現場では安全ヘルメットを被らず、安全帯を使用せず足場上で作業する者がいる。ケガをしてからでは遅い。現場代理人はケガをさせないという自覚と信念のもと現場を管理・指導していただきたい。作業員も自分の身を守り、同僚をケガさせないことを心がけ、安全を意識して作業してほしい。令和の新しい時代を迎える今こそ、安全はすべてに優先し、これを先輩たちが実践してきた「安全第一・命どぅ宝」の安全文化を継承していきたい。
また、働き方改革の推進として本年4月より時間外労働の上限規制、年次有給休暇の確実な取得等が実施されている。宮古は人手不足で各企業とも労働力の確保に苦労されているが、労働時間や労働条件を改善し働きやすい魅力ある労働環境を整備し求める人材の確保ができることを期待したい。
本日、6月14日午後3時より城辺公民館にて「宮古地区安全大会」が開催されます。安全で安心して働けるゼロ災職場の構築を宮古島で目指し、事業者と労働者が一体となった安全活動の気運創造のため大会を成功させたい。
新里 隆(しんざと・たかし)1966年生まれ。沖縄県南城市出身(旧大里村)。知念高校・崇城大学卒業後、労働基準監督官採用試験合格し福岡労働局採用。その後、佐賀労働局勤務(伊万里署・武雄署)、沖縄労働局では那覇署・宮古署・沖縄労働局監督課・労災補償課・総務課に勤務。宮古労働基準監督署は16年ぶりに本年4月に監督署長着任。趣味は陶芸と音楽鑑賞。