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行雲流水
2019年7月30日(火)8:54

【行雲流水】(知られざる琉球の歴史文化)

 宮里朝光(琉球歴史研究家・御茶屋御殿復元期成会会長)の著書『知られざる琉球の歴史文化』上巻、下巻が刊行された

▼日本では、山は富士山のような高い所をいうが、沖縄では、低くても木々の生い茂る所をヤマという。このように、文字は同じでも内容が違うことが多い。歴史や文化についても同様である。しかし、琉球の歴史を日本の歴史とオーバーラップさせて日本の歴史同様に考えがちである。そこで、琉球の歴史文化の神髄を知って、それを土台に新しい文化の創造に結び付けたいというのが著者の発想の原点である

▼著書によると、琉球の政治は、選挙と会議で運用され、役員は科(公務員採用試験)や推薦で選ばれた。会議では地位に関係なく全員敬語を遣った。相手の人権を重んじ、自由に発言させるためであった。また、国防機関はなく、武器携帯は禁じられ、役人は文官だけで、武官(武士)はいなかった。貿易立国を掲げ、外交交渉で周辺国間の平和を維持した

▼標準語は敬語を重視する首里語で、地位に関係なく、按司(大名)でも年上の百姓の使用人にも敬語を遣った

▼周辺国からは文化国家と認められていた。また冊封制度下でも、石碑の表には琉球文を刻し、冊封使(中国国王勅使)に見せるための漢文は裏面に刻んだ。琉球が自国の文化にいかに誇りをもっていたかを示している

▼薩摩の侵攻以降、さまざまな矛盾も露呈するが、戦後日本が目指した平和で民主的な文化国家建設の先がけとも言える琉球(沖縄)の伝統は誇り得るものである。(空)

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