旧盆の夜に大綱引き/上野宮国
豊穣祈願 住民総出の伝統行事
旧盆送り日の15日夜、上野宮国で伝統の大綱引きがあった。地域住民が綱を引き合って豊穣(ほうじょう)を祈願し、数百年受け継がれる旧盆最大の行事を盛り上げた。宮国部落会会長の宮國勝治さんは「大綱引きはわれわれの誇りだ」と胸を張り、「地域住民みんなの力でつないでいる。しっかりと守り抜きたい」と力を込めた。
宮国の大綱引きは市指定の無形民俗文化財。公民館前の大通りで行われ、地域住民が東西に分かれて綱を引き合う。起源は定かではないが、住民の間では300~400年続いているといわれる。旧盆の3日間引き合った時代もあるが、今は送り日の1日のみ。
今年も中学2年生の「綱生徒」(つなしーどぅ)を先頭に、多くの住民が早朝から綱の材料キャーン(シイノキカズラ)の刈り取り作業に精を出し、夜の本番に向けて綱を編んだ。
綱引きが始まったのは午後9時45分ごろ。雄綱と雌綱をつなげると、地域住民のほか、多くの来場者が参加して綱を引き合い、祭りを一気に盛り上げた。
中央部で引き合うのは宮国の若者の役目だ。汗だくになりながら掛け声を張り上げ、自軍の住民を鼓舞した。躍動感にあふれ、時に荒々しくなる男たちの目は真剣そのもの。旧盆最大の伝統を受け継ぐ誇りを全身から醸し出していた。
勝負の結果、今年は2勝1敗で東軍が勝利。若者たちは歓喜し、クイチャーを踊って喜びを表現した。
綱引きを終えると綱生徒が綱の首を切り、それぞれの御嶽に奉納した。住民は手を合わせ、地域の発展を願って祈りをささげた。
今年の東軍綱生徒の宮國功基(いさき)君は「綱を作ることも含めて地域の皆さんと一緒に伝統行事に参加することができた」と話しながら充実感あふれる表情に。「すごく昔から続いている行事なので、僕たちもしっかりと受け継いでいきたい」と決意した。
今年は大雨で開始時間が遅れた。部落会長の宮國さんは、過去には台風の暴風が吹き荒れる中でも綱引きを強行したといい、「それほど宮国にとっては重要な行事ということなんだ。先祖が守り抜いてきた綱引きを子々孫々までつないでいかなければならない」と伝統の重さをかみしめた。その上で「今年の旧盆もみんなの協力でこうして大綱引きをすることができた。宮国には最高の人材がそろっている」と感謝した。