行雲流水
2019年8月29日(木)8:54
【行雲流水】(馬耳東風)
イソップ物語の狼少年の話は、「ウソをつくな」という寓話だった。脳科学者によると、ウソでも真実でもくり返せば脳の反応感度は鈍っていくという。いわゆる〝慣れ〟だ
▼あたりまえすぎる抽象的な言葉をくり返し聞かされていると、人間の耳も「馬の耳」と同様、何とも感じなくなるようだ。「勉強しなさい」「けんかをするな」「飲んだら乗るな」などだ。打てば響く太鼓のような反響は聞こえてこなくなり、〝旧態依然〟が続くことに。マンネリ化は、怠惰と同義かもしれない
▼「平和」という言葉も、くり返し聞かされていると「馬耳東風」になっていないかどうか。空気と同じように「あたりまえ」だと思われがちだ。はたして「安全と生存」は、諸外国から保障されているのだろうか
▼東アジア情勢は、必ずしも「安全・安心」だとは思えない。香港や台湾、南シナ海や東シナ海に対する中国の執念は半端ではない。中国は国際司法裁判所の裁定を無視して南シナ海の実効支配を強行しつつある。香港の次は台湾、台湾の次はどこか。フィリピン国民も、ようやく警戒しはじめたようだ
▼日本人の大多数は、加害者になることも被害者になることもいやだと思っている。頭で描く理念と現実の国際情勢との落差を、どのように考えればよいやら。現実から目をそらすわけにもいくまい
▼わが家も、昔は「戸締まり」の習慣がなかったことを思い出す。〝人を見たら泥棒と思え〟は考えすぎだが、用心に越したことはないと考えたのだろう。現実的な対処方法が「施錠」だったのかも。(柳)