生徒たち感謝のゴール/光の村養護学校
卒業旅行トライ最後に
30年間、計399人限界挑む
光の村養護学校土佐自然学園・秩父自然学園高等部の生徒が宮古島でトライアスロンに挑む毎年恒例の行事が18日、開始から30年を経て幕を閉じた。ラストランに臨んだ6人は、住民やボランティアへの感謝を込めてゴールに飛び込み、「ありがとうございました」と繰り返した。この30年の間に、自己の限界に挑んだ生徒の総数は計399人。それぞれが宮古島で鍛え、社会に巣立っていった。
同校の卒業旅行は、高等部の生徒が全日本トライアスロン宮古島大会と同じコースに3日間をかけて挑むというものだ。同校が「本校の教育の核」と位置付けており、高知県の土佐自然学園、埼玉県の秩父自然学園の合同行事で、1990年にスタートしている。
創立者の故西谷英雄さんが生徒と一緒にトライアスロンに出場し、完走したことがきっかけで、「やればできる」とトライアスロンと卒業旅行を兼ねた。
同校を運営する光の村学園理事長の北野光子さんはこの30年を振り返り、「生徒や教師、保護者の誰もが宮古島なくして光の村教育は成り立たないと確信していた」と表現している。
だが、次第に継続が困難な状況になった。入学する生徒の障がいの重度化と多様化で、飛行機移動や慣れない場所での生活に対応できない生徒が増えてきたという。さらに宮古島の交通量が増え、特にバイク種目における生徒の安全確保が難しくなった。保護者の経済的負担も大きかった。
北野さんは「苦渋の決断をした。これまで応援してくれた皆さんに中止を伝えることは本当に心苦しく残念でならない」と胸の内を語り、「宮古島卒業旅行で指導を頂いたノウハウと創立者の建学の精神や理念を継承し、新たな卒業旅行に必ず挑戦する」と約束した。
そんな思い出深い宮古島トライアスロンのラストランに挑み、完走を果たした矢野陽色さんは「バイクとランは、風がとても気持ち良かった。(完走して)自信がつきました」と充実した表情で感想を話した。
息子の勇姿を見た父の真祐さん(38)は「全然できなかったことを、こうしてやり遂げてくれた。とても感動した」と誇った。
一戸勝文さんは「最後までよく頑張れた」と自分に合格点を出した。母の春恵さん(47)は「最後まであきらめず、スピードも落とさず頑張ってくれた。これから社会人になっていく上で力になる」と喜んだ。
ゴールでは宮古島トライアスロンクラブのメンバーやボランティア、保育園の園児が生徒を迎えた。ゴール地点の市陸上競技場に生徒が帰ってくると、大きな声援を送り、「可能性は無限大」の横幕を掲げて一緒にゴールに飛び込んだ。
第1回から伴走などでサポートしている同クラブの福嶺雅春会長は「やはり寂しいね」とぽつり。「ぼくたちは毎年彼らから力と勇気をもらっていた。来年のトライアスロンに挑む決意を固めることができた」と振り返りながらも、「(中止は)仕方がないこと。この30年間、みんな本当によく頑張った」とたたえた。