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社会・全般
【行雲流水】(バブル)
成田空港が完成するまでには、さまざまな出来事があった。その一つに、農地を手放して大金を手にした農民の話がある。「一度、銀座の高級クラブの雰囲気を味わってみたい」。一度のつもりが依存症になり、土地も金も失ってしまったという(当時の「週刊誌」)
▼本土復帰の頃、退職金を元手にヤギの飼育事業を思いついた大先輩がいた。小さな離島でヤギを放牧し、現地の知人にヤギ泥棒の監視を委嘱。昼間は農作業のかたわら、夜はヤギの鳴き声で盗難を防止できるはずだった
▼1年後、子ヤギは生まれているが全体の頭数が計画通り増えないことに気づいた。夜陰にまぎれて手こぎのサバニで島外から泥棒が来るらしい、とのうわさを耳にした
▼ヤギの大好物は塩だという。塩を手のひらに乗せて誘導すれば、ヤギは鳴かずにサバニまでついて来ることが判明。結局、なけなしの退職金を〝武士の商法〟で失ってしまった(ご本人の直話)
▼いずれも、牧歌的な時代の話ではある。前者は、免疫のない素朴な感情が〝大都会の魔力〟に飲み込まれた失敗例。後者は、中途半端な思い込みによる打算が〝自然界の摂理〟にかなわなかった失敗例であろうか
▼時代は変わって、今は情報量が豊富だ。その気になれば、学ぶ機会はいくらでもある。さまざまな知見を咀嚼(そしゃく)して、変化への適応能力も豊かになっている。経済環境の変化は、チャンスとピンチが背中合わせでやってくる。持続可能性を念頭に、考えをめぐらす必要があろう。シャボン玉は、いつかははじける。(柳)