「補助犬に理解を」/共生社会の形成向け
県内唯一の利用者が啓発/市主催講演会
障がい者の日常生活をサポートする補助犬について啓発する講演会(主催、宮古島市)が1日、平良港ターミナルビルであり、福祉事業や観光関係者、市民らが参加した。日本介助犬協会理事で医師の高柳友子さんと実際に介助犬を利用している新開秀雄さんが介助犬について説明した。高柳さんは法律によって補助犬が訓練・認定されているとし、「店舗や施設は犬の同伴を受け入れる義務がある」と説明し、共生社会の実現を求めた。
障がい者をサポートする補助犬は盲導犬、介助犬、聴導犬に分かれ、それぞれ必要に応じた訓練を経て認定されている。盲導犬は目の見えない人、見えにくい人の歩行を助ける。聴導犬は耳の聞こえない人、聞こえにくい人に必要な生活音を知らせる。介助犬は手や足に障がいのある人の日常生活を助ける。
高柳さんは「身体障害者補助犬法」について「障がい者の自立と社会参加を促進するための法律で、社会は補助犬を受け入れなければならないという法律。店舗や施設は入店を断ることはできない。犬を断るということは障がい者を断ることになり、差別になる」と指摘した。「補助犬は法律に基づいて訓練され、厳しい認定試験を合格して社会に出ている。ペット犬とは違う」と話し、ユーザー(利用者)が衛生面や行動について責任を持って管理しており、「社会に送り出した後のフォローアップ体制もしっかりできている」と理解を求めた。
また「ハードはすぐに変えられなくても、ハートはすぐに変えられる」という言葉を示し、「知らないから配慮できない。障がいは相対的なもので、何を必要としているかはそれぞれ違う。『手伝いましょうか、どうすれば良いか教えてください』と声を掛けてもらえるのが一番うれしいこと」と呼び掛けた。
介助犬を必要とする人は全国で約1万5000人だが稼働しているのは61匹しかいない。現状では半数の都道府県で介助犬がゼロだという。育成に約300万円が必要で寄付金などに頼っている。県内で唯一、介助犬を利用している新開さんが石垣市から来島し、介助犬との生活の様子を動画で紹介。介助犬はラブラドールレトリバーの雄で、会場で新開さんが落としたフックを拾ったり、スマートフォンを探して届ける様子を実際に再現した。新開さんは進行性の難病で、一人で車いす生活を送り、農業関係の仕事をしているという。